AIは温暖化対策の切り札になれないのか?「データセンターの電力消費量激増」というパラドックス、結局は原発頼み
■ 原子力発電と契約 効率的なハードウェアを導入し、アルゴリズムを最適化することで計算に必要なエネルギーを削減できる。例えばAIモデルのトレーニングや推論段階での電力使用量に上限を設ければ、12~15%のエネルギー削減につながる。もう一つの解決策は再生可能エネルギーや原発だ。 マイクロソフトのAIに使うデータセンターに20年間にわたり電力を供給するため、米コンステレーション・エナジーは9月、ペンシルベニア州のスリーマイル島原発1号機を16億ドルかけ再稼働させると発表。同2号機は1979年に炉心溶融(メルトダウン)事故を起こしている。 10月には、グーグルが米国次世代原子力発電のカイロス・パワーが開発する先進的な小型モジュール原子炉(SMR)からの電力を購入する計画を発表した。2030~35年に計7基のSMRを設置し、500メガワット規模の電力供給を目指す。 アマゾンもエナジー・ノースウエストやドミニオン・エナジー、XエナジーとSMRプロジェクトの推進に向け契約を締結。ノースウェストと最大960メガワット規模、ドミニオンと300メガワット規模の電力供給を目指す。
■ 「50年までに20年比で世界全体の原子力発電容量を3倍」 COP28では日本を含む22カ国が「50年までに20年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にする」との野心的な目標に向けた共同宣言を発表した。その後3カ国、COP29でさらに6カ国が参加し、賛同国は31カ国となっている。 COPの合意文書で原子力が気候変動の解決策として明記されたのは初めて。スリーマイル島、チョルノービリ(チェルノブイリ)、福島と続いた原発事故の影響で世界中の環境団体、市民団体が集うCOPで原発に向けられる目は厳しかった。しかし反原発の空気は一変した。 世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は「原子力はテクノロジー企業の関心と投資を惹きつけている。エネルギー安全保障、信頼できる供給と価格、気候変動への対応という要求に対する答えが原子力にあることを市民は認識し、支持している」と胸を張る。 米シンクタンク、ピュー研究所が5月に行った調査によると、米国の成人の56%が原発の増設に賛成と答えている。この割合は昨年から変わっていない。もちろん原子力よりも安価で安全な太陽光発電78%や風力発電72%の拡大を支持する傾向は依然として強い。