AIは温暖化対策の切り札になれないのか?「データセンターの電力消費量激増」というパラドックス、結局は原発頼み
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 「デジタル産業は温室効果ガス排出の責任を負う」 【写真】マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏の近影。現在はテラパワーやカスケード・インベストメントの会長などを務めている [バクー発]アゼルバイジャンの首都バクーで開かれている国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)で国際電気通信連合(ITU)のドリーン・ボグダンマーティン事務総局長は「環境に配慮するという点でデジタルはさらに進化しなければならない」と力を込めた。 「デジタル産業は環境への影響を削減することが可能であり、また削減しなければならないという共通の信念の下、エネルギーと資源を投入し、気候危機への取り組みにその可能性を活用することを約束する」とボグダンマーティン事務総局長は言う。 昨年、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれたCOP28でデジタルとグリーンを両立させるためグリーン・デジタル・アクション・トラックが立ち上げられ、COP29で初の「デジタル化の日」(11月16日)が設けられた。温室効果ガス排出を考慮してデジタル化を進めるのが狙いだ。 「世界のデジタル産業は温室効果ガス排出の責任を負っている。と同時に温室効果ガス排出を相殺するのに役立つ人工知能(AI)による素晴らしい解決策に目を向けることができる。私たちは人類と地球のためになるグリーンな方法でデジタル化を進めなければならない」
■ グーグル、マイクロソフト、アマゾンの排出量は激増 AIプログラム、特にChatGPTやその他の高度な機械学習モデルには指数関数的な計算能力が必要だ。プログラムはデータセンターに設置されたサーバー上で1秒も休むことなく稼働し、膨大な電力を消費する。オーバーヒートや故障を防ぐためのサーバーの冷却にも電力が要る。 国連の報告書「グリーン化デジタル企業 2024」によると、AI開発者で大手クラウドプロバイダーのグーグル、マイクロソフト、アマゾンは操業時の温室効果ガス排出量が2020~23年にかけ62%増加した。電力使用量の増加はもっと著しく同じ期間に78%も増えている。 調査対象となった200社のうち148社が22年の電力消費量を518テラワット時と報告している。これは世界全体の約1.9%に相当する。消費量が最も多い10社はこのうち51%を消費しており、21年より9%も増えていた。 世界経済フォーラムは今年4月、AI専用の計算能力が約100日ごとに倍増していると報告。AIタスクの実行に必要なエネルギーは毎年26~36%のペースで増え続けている。化石燃料から電力を調達している場合、二酸化炭素排出量を増加させる。