山の恵みは鉄分やビタミンたっぷり…ジビエの魅力を科学が証明 作って納得「野生」のうまみ、おすすめレシピも紹介
イノシシやシカなど野生鳥獣肉「ジビエ」の利用が進んでいる。鹿児島県内では専門の処理加工施設が増えているものの、捕獲した9割以上は廃棄されている。せっかくの“山の恵み”を生かさないのはもったいない。17日からは鹿児島や阿久根など5市の飲食店20店舗が、ジビエの丼などを提供する「ジビエーる丼フェア」も始める。学んで、食べて、魅力を探った。 【写真】シカ肉のミンチ。こねる前にたたいて細かくする
シカは牛に比べて高タンパクで鉄分は2倍、脂質は6分の1とヘルシーで、イノシシも豚に比べて鉄分が4倍、ビタミンB12は3倍とされる。家畜栄養学を専門とする鹿児島大学共同獣医学部畜産学科の大塚彰教授(59)は「栄養満点なのは間違いない。それだけでなく、健康機能性に関する成分も豊富な可能性がある」と話す。 大塚教授は数年前、天城町との共同研究でリュウキュウイノシシ肉の成分を調べた。結果、抗疲労成分の「バレニン」の含量が陸上動物の中で最も多く、同じく「カルノシン」も豊富なことが分かった。ジビエの普及に向け、こうした特長はアピールポイントになり得る。2024年度からは県の委託事業で、阿久根市と日置市のジビエ処理施設から仕入れたイノシシ、シカの肉の分析を進めている。 野生鳥獣の肉は、どんな餌を食べているかによって味に個性が出るため、県内でも生息地域や季節で違いが生じる可能性がある。機能性成分に加え、赤身のおいしさに関わるグルタミン酸などの遊離アミノ酸の含量も調べる。「将来的には成分データと官能検査を組み合わせて分類し、『鹿児島ジビエマップ』を作れたら面白い」と構想する。
◇ ジビエーる丼フェアの基本メニューを監修する1級フードコーディネーター杉水流直子さん(45)=Table of Smile代表=考案のレシピを参考に、「シカハンバーグの大根おろしソース丼」と「イノシシ肉甘辛しょうが焼き丼」を作った。 いずれの肉も、豚や牛といった畜肉より赤みが強く鮮やかな印象。イノシシはバラのかたまり肉だったので、薄切りする必要があった。脂身が固く締まっていて、野生ならではのたくましさを感じた。 シカのハンバーグの加熱中、嗅いだことのないにおいが立ち上った。牛や合いびき肉とは違うが、不思議と食欲をそそる。これもジビエの特徴なのだろう。 先入観でつい身構えてしまったが、実際はシカもイノシシも臭みは全くなく、箸が進んだ。シカはレバーに似た味わいで、ガツンと食べ応えがある。爽やかなおろしソースがよく調和していた。 イノシシは豚肉に比べて歯ごたえがあり、脂身はほのかに甘い。薬味のネギと合わせて食べると絶品だった。肉質がしっかりしているので、もっと薄く切ると食べやすいかもしれない。