中国不動産大手「万科」の格付けがジャンク級に ムーディーズが引き下げ、さらなる降格も示唆
中国の不動産大手の万科企業(バンカ)が、資本市場の厳しい視線にさらされている。国際的な格付け機関のムーディーズ・インベスターズ・サービスは3月11日、万科の発行体格付けを「投資適格級」から「ジャンク級」に引き下げ、さらなる格下げの可能性を示した。 【写真】万科企業が2022年に深圳市政府および市内の有力企業と開催した戦略提携式典(同社ウェブサイトより) 具体的には、投資適格級の下限の「Baa3」だった万科の発行体格付けを取り消し、ジャンク級である「Ba1」のコーポレートファミリー格付けを付与した。また、すでにジャンク級だった万科のドル建て債券の長期格付けも「Ba1」から「Ba2」に引き下げた。
■財務の「優等生」にも危機が波及 格付けのジャンク級への引き下げは、万科が発行した債券に関して短期的な元利返済能力に限りがあり、ひとたび経営状況が悪化すればデフォルト(債務不履行)が生じる可能性がある(とムーディーズが判断した)ことを意味する。 中国の不動産大手の流動性危機は2021年後半に表面化したが、最初のうちは恒大集団(エバーグランデ)に代表される過剰債務を抱えた民間デベロッパーの問題だった。
ところが2022年に入ると、かつては財務の「優等生」とみられていた融創中国(サナック・チャイナ)などにも信用不安が波及。2023年後半には、住宅販売額で業界トップだった碧桂園(カントリー・ガーデン)も深刻な経営危機に陥り、市場関係者に衝撃を与えた。 そんななか、万科は2023年10月末に最初の信用不安に直面した。同年11月6日、万科は金融機関を招いたオンライン会議を開催し、出席した(万科が本社を置く)広東省深圳市の国有資産監督管理委員会のトップが同社に対するサポートを公に表明。資本市場の動揺はいったん収まった。
だが2024年2月、万科は再び試練に見舞われた。2月19日、深圳市に本社を置く商業・物流施設大手の華南城のドル建て債券がデフォルト。それをきっかけに、地元企業に対する深圳市政府の(サポート表明による)“信用補完効果”に市場が不信の目を向け、万科の債券や株式が売り込まれた。 ■手元流動性は縮小の一途 さらに2月末には、万科が(信託投資や委託貸付などの)非標準債務の返済に関する2回目の期限繰り延べを複数の保険会社と交渉しているとの情報が広がり、同社の先行きへの悲観ムードに拍車をかけた。