服選びにトレンドや診断を取り入れても、しっくりこないのはなぜ?専門家が教える「ファッションの正体」とは
皆さんは、どのような基準で着る服を選んでいますか?2021年に消費者庁が全国の男女2,000人に行った調査によると、7割以上の人が服を購入する際に「価格」「デザイン」を重視するそう。「ファッションにも理論や仕組みがあり、それを知るだけで簡単に『センスのいい着こなし』ができます」と語るのは、ファッション・プロデューサーのしぎはらひろ子さん。しぎはらさんは、「あなたが身に着けているファッションには、とても素敵な『知恵と力』が潜んでいるのです」と言っていて――。 【書影】一度知ったら、一生の武器になる「服選び」が分かる『「センスがいい人」だけが知っていること』 * * * * * * * ◆「ファッションの正体」とは? 「センス」とは? ファッションとは、何だと思いますか? 「トレンドを楽しむもの」「パリコレクションやモード」「憧れや夢」「元気をくれる」「自己表現」……こんな言葉が浮かんできたのではないでしょうか。 確かに、ファッションにはこうした特別感や芸術的な側面もあります。 ですが、それだけではありません。 日常生活の中であなたが身に着けているファッションには、とても素敵な「知恵と力」が潜んでいるのです。 シンデレラが魔法の杖で美しいドレス姿に変身したとたん人生が好転したように!
◆「着る」「装う」、服にはちゃんと“役割”がある ここで、ファッションの歴史を遡(さかのぼ)って簡単にご説明しましょう。 原始時代、人間は「暑さ寒さから身を守る」ために、動物の皮などを服として身にまとっていました。 その後、集団ができて社会活動が営まれるようになると、人間は「何をしている人かがひと目でわかるような、特別な装飾」を服に加え、自分が何者であるかを周囲に示すようになります。 身を守るために「着る」という当初の働きに、身分や立場を示す「装う」という働きが加わったことで、服は大きく発展することになりました。これが、ファッションの成り立ちです。 つまり、着ている人がどういう人間なのか、またどういう身分や立場にあるのかを、言葉を使わずひと目で伝えられるように発達したものがファッションなのです。 「太陽王」といわれたフランス国王・ルイ14世の時代に、王侯貴族が金銀宝石やシルクなどで贅沢に着飾っていたのも、自らの地位や権力を示すためでした。 実は、貴族や庶民などという階級がなくなった現代でも、衣服が立場を表すという流れは変わっていません。 ファッションはこの「装う」という歴史の上に成り立っています。学生服やさまざまな職業の制服、冠婚葬祭用の礼服からモテ服まで、ショップに並ぶ多くの服はすべて「装う」という働きから目的別に細かく分けられているのです。そして人は、相手のことを「着ている服」でどういう人か認識しています。 「えっ、服だけで!?」と驚いたかもしれませんが、シンデレラがドレス姿だから舞踏会に入れたように、あなたも初対面の人に会ったとき、服装などの外見で「きっと、こんな人なんだろうな」と、自分の感じた印象でその人を認識していませんか?