服選びにトレンドや診断を取り入れても、しっくりこないのはなぜ?専門家が教える「ファッションの正体」とは
◆すべての服は言葉を持っている ここにある、2種類の服のイラストをご覧ください。 左側は、ふんわりふくらんだパステルカラーのワンピース。右側は、かっちりした濃い色のスーツです。この2つのイラストの服装から、それぞれどのような人物を想像しますか? 1枚目のワンピースからは「お嬢様」「かわいらしい女性」、2枚目のスーツからは「真面目そう」「有能なビジネスウーマン」といった人物が浮かんできませんか? では、なぜ、そう思ったのでしょうか? それはあなたの中に、今までに見てきた映画やドラマなど、さまざまなメディアを通して刷り込まれた服のイメージがあるからです。 私は、そのイメージを「服の言葉」と呼んでいます。 優しい色、カッコいい形、かわいいテイスト…というように、すべての服には色、形、テイスト(雰囲気)に、言葉があるのです。これは「ファッションの法則」です。 「服の言葉」=イメージが結び付いて、人は無意識にその言葉と着ている人を重ねて捉えています。ですからなんとなく服を選んで着ていると、自分が何も言わなくても、服が「私はこういう人間なんです」と自分が伝えたい自分の印象より先に勝手に話し出してしまいます。 じつは、服は、あなた以上におしゃべりなのです。
◆トレンドや診断を取り入れても、しっくりこない…? 服とは本来「どういう自分で在りたいか」「自分をどう見せたいか」という意思に基づいて選び、身につけるものとして発展してきました。ですから、「私はおしゃれが苦手だから代わりに選んで」ではなく、「自分はどうなりたいのか」ということを、服を着る本人が考えて決めなければならないのです。 トレンド情報や、「*歳までに持っておきたいマストアイテム!」や、あるいはさまざまなスタイリング診断などに頼っては振り回されていると、やがて自分でも何が好きでどうなりたいのか、本当にわからなくなってしまいます。 そうした状態で選んだ服は、どこかぼんやりとしてちぐはぐで、自分でも納得がいかないのではないでしょうか。 「トレンドも取り入れているし、診断も受けたのに、なんだかしっくりこない」というお悩みの原因は、自分が「どうなりたいか」が曖昧だからなのです。 今、多くの人がこういう状態に陥ってしまっている原因は、アパレル業界のしくみにあると私は思っています。 アパレルメーカーが生き残るには、服を常にたくさん売り続けなければなりません。そのために生み出されたのがトレンドです。 「私は服を殺すのよ、次の新しい服を売るために」コレはココ・シャネルの言葉です。 つまり、トレンドを煽(あお)ったり終わらせたりを繰り返して、新しい服を買うように促すのがアパレル業界の定めなのです。 買う側も「トレンドに乗っていないとダサいと思われる」という不安感から、トレンド服に次々と手を出すようになります。その繰り返しの中で、自分は何が好きか、どう在りたいのかといった大切なことが置き去りにされ、本来の服の選び方もどこかへ消えてしまった──。 これが、今のファッションだと私は推測しています。 ですから、「私はこう在りたい」「自分をこう見せたい」というはっきりした意思があれば、トレンドやさまざまな情報にも振り回されずにいられるのです。 「自分はどうなりたいのか?」という意識。これが服選びにおける絶対的な基準です。 ※本稿は、『「センスがいい人」だけが知っていること』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
しぎはらひろ子