2023年プロ野球 球団別「劇的すぎるサヨナラゲーム」(セ・リーグ編)
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、2023年のプロ野球を熱く盛り上げた「劇的すぎるサヨナラゲーム」にまつわるエピソードを紹介する。今回はセ・リーグ編。 【写真】広島・秋山翔吾 11年ぶり逆転サヨナラアーチでナインに迎えられる
延長タイブレークの末の劇的なサヨナラ優勝で幕を閉じたアジアプロ野球チャンピオンシップ。振り返れば、今年(2023年)のプロ野球も劇的なサヨナラシーンに溢れていた。今回は各球団別で、今季とくに忘れられない「劇的すぎるサヨナラゲーム」を振り返っていきたい。
■中日ドラゴンズ:8月の宇佐見真吾
今年6月、2対2の交換トレードで日本ハムから中日へと移籍した宇佐見。日本ハムでは今季9試合の出場にとどまり、ヒット0本だった男が中日移籍とともに復活。7月に打率3割をマークすると、8月には勝負強さも発揮し、8月13日の広島戦、16日の巨人戦、27日のDeNA戦と、月間3本のサヨナラヒットを放つ離れ業を演じた。 宇佐見の3つのサヨナラ打がひときわファンの心に残ったのは、この8月13~27日の2週間、中日は連敗続きだったこと。つまり、宇佐見サヨナラ→宇佐見サヨナラ→8連敗→宇佐見サヨナラ、という状況だったのだ。 また、13・27日の試合はともに延長サヨナラ。しかも、どちらも柳裕也が先発登板し、13日は9回ノーノー、27日は7回1失点という好投を演じながら打線の援護が間に合わずに降板。そんな「ムエンゴのエース」に報いるものとなった。 『柳も頑張って頑張って投げてくれていた。中継ぎも頑張っていた』 ~『日刊スポーツ』2023年8月27日配信記事 より(宇佐見真吾の言葉) サヨナラヒットを月間3度もマークしたのは、88年8月の落合博満(中日)、02年8月の阿部慎之助(巨人)に次いで3人目の快挙だった。
■東京ヤクルトスワローズ:苦しんだキャプテンの一振り
リーグ連覇から一転、今季5位に沈んだヤクルト。最終戦の結果いかんによっては最下位転落もあり得る苦しいシーズンだった。そんなチーム同様に苦しんだのがキャプテンの山田哲人だ。 今季の山田と言えば、開幕前はWBC優勝に貢献したものの、ペナントレースではキャリアワーストの打率.231、14本塁打、4盗塁と、「山田哲人」としては寂しい限り。そんな鬱憤を晴らすかのように大当たりだったのが10月4日、阪神を神宮球場に迎えての今季最終戦だ。 まずは3点を先制されたあとの1回裏、反撃の狼煙となる14号ソロを放つと、5回裏にはレフト前への同点タイムリー。さらに、2点を追いかける9回ウラ、同点に追いついてなおも1死一、三塁で打席に立った山田がセンターへのサヨナラ犠牲フライ。シーズンを締めくくり、最下位転落を防ぐ貴重な一打となった。 セ・リーグ連覇のチームが翌年最下位転落となればリーグ初の屈辱だっただけに、まさにキャプテンの意地が呼んだサヨナラ劇だったと言える。