金沢で能登復興に向けた議論 価値ある古民家を解体しないで残すには
能登復興を議論する「のとボイス『いかに残し、いかに使うか?』」が12月1日、ITビジネスプラザ武蔵(金沢市武蔵町)で行われた。(金沢経済新聞) 【写真】「のとボイス」の様子 主催は能登復興建築人会議、認定NPO法人「趣都金澤」、みやぎボイス連絡協議会から成る「のとボイス連絡協議会」。能登復興に関わるさまざまな課題に対し、NPOや大学の識者、行政、住民などが集まって解決に向けた議論を行う取り組みで、東日本大震災の際に活動した「みやぎボイス」のノウハウを生かしながら進めていく。当日議論に参加したのは約20人で、会場には約40人が集まった。 同協議会副会長の浦淳さんは「被災地で住宅相談をする中で価値のある建物が次々に解体されていく現状に触れ、被災者の生活や気持ちの面だけではなく文化面、環境面、費用面などでも課題を痛感した」と話し、解体に関する課題を早急に議論したく今回は第0回として企画したという。 浅野大介石川県副知事は「貴重な建物を直すことよりも解体を選択してしまう現状に疑問を持つ人が多い。県としても本年度中に現状を調査し、建築士の判断や不動産としての評価など、関係者が集まった古民家活用を検討するタスクフォースを立ち上げたい」と話す。 認定NPO法人「日本都市計画家協会」の神谷秀美さんは「公費解体して仮設住宅に入る、というのが当たり前かのような感覚に陥っている。家を直して住み続けた方が早く安く、長続きするケースも多い。全てを新しく建て替えてしまったら、その土地の価値がなくなり、将来、誰も住まなくなる」と危惧する。 能登で復興支援しているという建築家からは「壊れた住宅を修繕して住むという選択肢が示されず、解体を急(せ)かされている。これくらいの費用でこれだけ直せるという事例をモデルハウス的に見せることも必要」「部分解体が選択肢にない。木造住宅は直して住むのに適した建築なので、小さく減築して住むことも考えるべき」などの提案があった。能登の住人からは「家を直そうにも工務店の確保が難しく時間もかかるので、諦めて解体を判断する人も多い」と厳しい現実の紹介があった。 空き家の利活用に関して「多額の予算で建てた災害公営住宅が数年で空き家になった事例がある。復興後にシェアハウスや民泊、移住者向けの施設などに転用できるよう、あらかじめ設計や計画をしておくことが必要」「家主が遠地の場合でも、一棟貸しなどの家賃収入を見込んで家の修理に投資しようと思ってもらう工夫が欲しい」「空き家を使って移住者や滞在者を増やすことは大切だが、能登では地域との関係性など『集落』として考えなければ」という意見が出た。 最後に大阪公立大学准教授で復興アドバイザリーボードの菅野拓さんは「東日本大震災の時と比較して課題が明確になっていると感じた。関係者も集まったので、次回以降は解決のアイデアを生み出して、道具をそろえていきたい」と意気込む。 第1回は2025年2月に開催予定。
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