歌うコウモリが新たに判明、超音波の“ラブソング”か、北米で2種目のシルバーコウモリ
「鳴き声」とは異なる複雑な音、さらなる発見にも期待
カナダ西部、ブリティッシュ・コロンビア州の廃鉱の外では、愛の歌が飛び交っている。ただし、超音波を聞くことができなければ、それらを楽しむことはできない。2023年12月18日付けで学術誌「Wildlife Society Bulletin」に発表された論文によれば、その「歌」の主は、この地にすむシルバーコウモリ(Lasionycteris noctivagans)だ。 【音声】シルバーコウモリの歌、ラブソングに聴こえる? コウモリは夜空で現在地を確認したり、獲物の昆虫を見つけたりするため、音を出すことで有名だ。これは反響定位(エコーロケーション)として知られる。 しかし2011年冬、「コウモリ探知機」と呼ばれる音声記録装置が、シルバーコウモリでは記録されたことがない新しい種類の音を検知した。 「反響定位ではあり得ない音のパターンでした。反響を聞く暇がないほど、素早く音を出していたためです」とカナダ野生生物保護協会の生物学者としてコウモリ保護の責任者を務めるコリ・ローセン氏は話す。「音のパターンが決まっており、毎晩のように検知されました」 ローセン氏はこのパターンについて、最初の音に続いて、滴が落ちるような音になり、最後にさえずりのような音が繰り返されると説明する。人の耳には聞こえないほど高い周波数の音だが、ローセン氏は再生速度を遅くすることで、シルバーコウモリの歌を人にも聞こえるようにした。 シルバーコウモリは体重がトランプ6枚分ほどで、カナダと米国の森林ではよく見られるコウモリだ。 オスとメスのどちらがこの歌を口ずさんでいるかは不明だが、ほかのコウモリの研究や、歌が記録された時期にシルバーコウモリたちが交尾していたことを示す物的証拠から、ローセン氏は求愛の歌だと考えている。つまり、コウモリのラブソングだ。 さらに、今回の発見によって、北米のコウモリたちの交尾に関する理解が深まる可能性もある。多くのコウモリが、まだ発見されていない求愛の歌を持っているかもしれない。