歌うコウモリが新たに判明、超音波の“ラブソング”か、北米で2種目のシルバーコウモリ
歌と鳴き声の違いは?
コオロギの高い声からウシガエルの大きな声まで、自然界には音楽があふれていると思うかもしれない。しかし、自然界に存在するすべての音がバラードと見なされるわけではない。 「鳴き声と歌の違いは重要です」と聴覚神経科学を専門とする米テキサスA&M大学の生物学者マイク・スマザーマン氏は話す。「カエルには鳴き声があり、彼らはいつもそれを繰り返していますが、私たちがそれを歌と呼ぶことはありません」 歌と呼ばれるのは、それぞれ意味を持つさまざまな音節を重ねて出された音だが、歌う動物ははるかに珍しい。このような複雑さを生み出す動物としては、ヒトと鳥類が最もよく知られている。 ローセン氏によれば、コウモリの多くの種は可聴音を出すという。「コウモリの群れがバットボックス(コウモリの巣箱)や屋根裏にすみ着いたことがある人は、小さな甲高い音を聞いたことがあるでしょう」 では、コウモリの歌は? ヨーロッパでは多くの種が歌うことで知られているが、北米ではこれまで、メキシコオヒキコウモリ(Tadarida brasiliensis)しか知られていなかった。 メキシコオヒキコウモリを研究しているスマザーマン氏によれば、オスの歌にはメスを引き付けるための音節が1組含まれ、すべての歌がほかのオスを撃退するための攻撃的な音で締めくくられる。同時に、ほかの種が出す音と明らかに違う要素がある。 「今回記録されたシルバーコウモリの音にもそれらすべてがあると思います」とスマザーマン氏は話す。「それは間違いなく歌と呼べるものです」。なお、スマザーマン氏は今回の研究に参加していない。
今後も増加? コウモリの歌の発見
多くの人はコウモリの歌について耳にすること自体が初めてだろうが、これが最後になる可能性は低い。 「この20年で、科学者が現地で歌を録音し、誰がどのような文脈で歌っているかを記録できる新技術が登場しました」とスマザーマン氏は話す。「このような観察が爆発的に増えるだろうと私は期待しています。そうなれば、コウモリに対する人々の見方が様変わりするでしょう」 シルバーコウモリの歌は科学的発見として魅力的なだけでなく、シルバーコウモリの生息地を新たにマッピングする際や、その地域が風力発電プロジェクトに適しているかを判断する際に役立つ可能性があるとローセン氏は考えている。氏によれば、渡りを行うコウモリが風力タービンに命を奪われており、個体の数を維持できないほどの被害が出ているという。
文=JASON BITTEL/訳=米井香織