「暗闇の世界に一筋の光」性暴力に遭った女性が感激 歴史的な「刑法の性犯罪規定」改正(後編)「同意しない意思」の価値
その上でこう指摘した。 「今までにない形の条文なので、解釈に混乱があってはいけない。適用に『ぶれ』がなく順当な処罰と言えるかどうか、今後、判例で形成されていく判断基準を注視し、検証していくことが重要だ」 ▽時効が5年延長、それでも被害者にとっては短い 一方、今回の改正法では見送られた論点も多くある。 まず、性的行為に同意できるとみなす「性交同意年齢」。今回の改正で13歳から16歳に引き上げられた。この点については、同年代同士の行為が罪とならないよう、注意が必要だ。そこで改正法では13~15歳について、相手が「5歳以上年上」の場合に処罰対象とした。しかし十代前半にとって「5歳差」は大きい。「対等とは言えないケースがある」という批判は強い。 次に、公訴時効のさらなる延長を求める声も根強い。今回の改正では、時効が5年延長された。その結果、不同意性交罪の時効は15年となった。さらに、被害者が18歳になるまでは実質的に「時効が進まない」規定も設けられた。
ただ、金子さんが受けたようなケースでは、やはり時効の壁を乗り越えられない。 「Spring」は「被害をそもそも打ち明けられない人は多い」と指摘している。「Spring」が調査したところ、挿入行為を伴うケースでは、約15%が被害認識に16年以上を要していた。 被害者支援に携わる上智大の斎藤梓准教授(臨床心理学)は、時効のさらなる延長が必要だと指摘している。 「幼少期の性虐待は被害認識に時間がかかる。大人でも、自責の念などから申告が遅くなることが多い。やっと話せるようになった時に警察に届けられないのは理不尽だ」 時効の在り方を考える上で斎藤准教授が必要と考えるのは、改正法施行後の実態調査だ。 【取材後記】私もサバイバーだ。 性犯罪規定改正の取材を進めてきた私も、実は「サバイバー」の一人だ。 性暴力に遭うと、そのショックから記憶をしまい込み、何年、何十年とたってフラッシュバックを経験する人が多い。日常の出来事、目にした風景、そうした「何か」がトリガー(引き金)となり、突如痛みに襲われる。