「暗闇の世界に一筋の光」性暴力に遭った女性が感激 歴史的な「刑法の性犯罪規定」改正(後編)「同意しない意思」の価値
改正された刑法の性犯罪規定が7月、ついに施行された。改善すべき点はまだあるが、それでも歴史的な一歩と言える。理由は、多くの被害者が泣き寝入りさせられてきた要件が取り除かれたためだ。 【写真】「レイプ神話」届かぬ被害者の声 杉田水脈議員は逃げ切ったのか
これまでは、被害を訴えても「必死に抵抗した立証できないから立件できない」と言われがちだった。しかし、実際は恐怖で体が凍り付いたり、突然のことで混乱するなど抵抗できなかったりするケースが多い。今回の改正では、そうした被害実態を踏まえた形になった。 改正の原動力になったのは、被害者たちの声。長年、沈黙してきた人々が、街角や法改正を議論する場で、勇気を出して訴えたためだった。 性暴力の被害当事者団体「Spring」で活動を重ねてきた金子深雪さんもその1人だ。「被害者が同意していなかったことに重きが置かれた。『嫌よ嫌よも好きのうち』といった加害者に都合のいい解釈にノーを示せる」(共同通信社会部記者) ※この記事は性暴力についての記述があります。サバイバーの読者はフラッシュバックなどに気を付け、無理をされないでください。 ▽封じた記憶、それでも差した光 金子さんは近年まで、複数回に及ぶ性被害を受けてきた。
初めてわいせつ被害に遭ったのは7歳の頃。休日に遊びに行った小学校の裏庭で、見知らぬ若い男が背後から近づき、体を触りだした。ズボンを下ろされ、男の手首に噛み付き必死に抵抗した―。そうした被害時の記憶は鮮明だ。 ただ、その後の記憶は欠落している。周囲の無神経な言動にショックを受けたからだ。被害直後に警察へ行った時、性被害に遭ったことを知った近所の人が、泣いている金子さんに指を差し、笑ったという。その瞬間。「なんで笑うんだ」と強い憤りを感じ、意識が飛んだ。性被害で起きることのある「解離」と呼ばれる症状だった。 数年後には、PTAで金子さんの被害が「逃げられなかった事例」として、保護者間で、名前を出して共有された。完全なる二次被害。「とてもショックを受けた」 その後、悪夢を見るようになったり、抑鬱状態が思春期の間ずっと続いたりした。 「被害そのもののショックももちろん大きいが、時には二次被害の方がずっと破壊力がある」