元中学教諭が始めた格安の米国留学プログラム「ハードル下げ、起業家精神を育てたい」
なぜ格安で可能? ワールド寺子屋、始めた訳
ワールド寺子屋を中村さんが思いついたのは、千葉県松戸市の公立中学校の英語教師をしていた経験からだ。 大学時代に30カ国を巡った経験から、若い人にはどんどん国外に出て、視野を広げてほしいと思ってきた。しかし、海外に興味を持ってくれる生徒はいるものの、金銭的な理由などで実際に留学できた生徒は一人もいなかった。 2022年に中学教諭を辞めて、スタンフォード大へ入学。授業の傍ら、留学プログラムの構想を練り、日本語学科がある高校を15校回って、「日本から若者を受け入れてくれるハブを作りたい」と熱意を語り、2校から受け入れの承諾を得た。 現地の高校教員が、留学生を無償でホームステイさせてくれる家庭を、日本語を学んでいる生徒の家族から選ぶ。スタッフはボランティアで募り、クラウドファンディングで150万円の資金を集め、参加費を航空券込み20万円まで下げた。 2023年3月に初めて実施。10人の高校生が米国へ飛んだ。赤字だったが、手応えは感じた。 2回目となった24年3月の留学では、中村さんの出身校である早稲田大と連携。文部科学省の補助金(EDGE-PRIME Initiative ▼https://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/platform/index_00008.htm )を活用したことで、参加者は無料で留学できた。10人の募集枠に対して440人から応募があった。 参加者への事後アンケートでは、留学前に取り組んだ研修自体が役立ったとの声が多かった。そこで、この研修を独立させたプログラムを今年から実施。7月からは新たに、40人を対象にキャリア自己分析やプロジェクトの企画、行動、実践を海外大の学生とともに学ぶオンラインプログラムも始めた。7月末から10月までの約3カ月間、現役ハーバード大生らから話を聞き、自身の興味分野を深掘りしていく。費用は2万円。ここでの優秀者は来年の留学の1次選考が免除される。 中村さんは「地方にいて留学にハードルの高さを感じていた人ら、より多くの人が留学にアクセスできるようにし、変化を恐れず主体的に行動できる人を育てたい」と話す。