なぜ設楽悠太は東京マラソンで日本新記録を樹立し1億円をゲットできたのか
「昨年9月から日本人選手には負けてないので、マラソンでも負けるつもりはありませんでした。40kmをベースにマラソン練習をする選手が多いですけど、僕は30km走までです。最近の選手は走り込みが足りないという意見を聞きますけど、そんな時代ではありません。いいシューズを選び、効率よく練習することがマラソンで結果を残すための近道だと思っています」 設楽は日本の実業団選手がベースにしている40km走には否定的な意見を持つ。だからといって走り込みをしていないわけではない。週に1回は30km走を入れている。ペースはキロ3分30秒と速くないが、試合のある週でも、レースの3日前には30km走を行うなど、総合的に距離を踏んできた。しかも、レースを全力でこなすことによって、自分を追い込み、経験値も上げてきた。そして、マラソンの日本記録まで到達した。 「僕のなかではこれが限界だったので、課題も反省点もないですね。この先も30kmまでしか踏まないですけど、レースに出場することでカバーできると思っているので、自分のスタイルを変えるつもりはありません」 瀬古リーダーの口癖でもある「最近の選手は走り込みが足りない」という言葉とは異なるアプローチになるが、「ペース配分など、あまり先を考えないで走れる。恐れを表に出さないところが凄い。我々が持っている常識とは違う。そこが彼の強みですね」と瀬古リーダーも設楽のチャレンジを絶賛した。 2度目の優勝を飾ったディクソン・チュンバ(ケニア)の背中に近づくことはできなかったものの、設楽はリオ五輪銀メダルのフェイサ・リレサ(エチオピア)ら世界大会でも活躍する2時間4~5分台ランナー5人に先着。メジャーレースとなったTOKYOで2位に食い込んだことは高く評価してもいい。今回はいくつもの要因が重なり、設楽が日本記録を塗り替え、井上も日本歴代4位の好タイムでまとめた。昨年12月の福岡国際では大迫傑(Nike ORPJT)が快走した。25~26歳の選手たちが世界レベルに急上昇しつつある。2020年東京五輪に向けて、日本マラソン界に明るい光が差し込んできた。 (文責・酒井政人/スポーツライター)