現役トップレーシングドライバーが母校で講演! 山本尚貴選手が小学生&高校生を相手に「レースの世界」を語った
人生を支えた母校に凱旋
読者の皆さんのなかには、自身の母校に著名となった卒業生が来校したことはないだろうか? どんな人が来るかはその学校やタイミング次第ではあるが、その多くは恩師や関係者が招き、子どもたちのために「将来の夢」や「学生の間にやっておくべきこと」「挫折からの立ち直り方」……などを生徒たちの前で語ることが通例だ。 【画像】ホンダのGT500クラスマシン「CIVIC TYPE R-GT」の画像を見る そんな「著名人の母校への凱旋」に関する案内が、WEB CARTOP編集部にやってきた。この手の話題で真っ先に思い浮かぶのが、「レーシングドライバーが母校にやってくる!」みたいなケース。話を聞くと、レース界で”部長”という愛称でお馴染みの、現役トップレーサーである山本尚貴選手が、母校である栃木県の作新学院を訪れるという内容。 山本尚貴選手といえば、2010年よりフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)、スーパーGTではチーム国光の100号車のステアリングを握り続け、数々の輝かしい結果を残しているベテランドライバーのひとり。ファンも非常に多い人気選手だ。スーパーGTではずっとホンダ車で戦っていることもあり、ホンダファンからもお馴染みのレーサー。 ちなみに筆者は埼玉県出身であるが、高校時代は栃木県のとある私立高校に通っていた。なので、案内にあった作新学院は当時(いまでも)、スポーツの分野では常にライバル校。個人的なことだが、なんだか懐かしい気もちにもなった。 というわけで今回は、7月11日に行われた3回目の開催となる山本尚貴選手の母校訪問について紹介しよう。 まず、訪れたのは作新学院の小学部の全児童300人ほどが集まる体育館。すると、元気いっぱいな児童たちからは大歓声が湧き上がる。小学生らしい元気溢れる声援は、レース後の表彰台に上がる前のような迫力さえ感じ取れる。山本選手も思わず圧倒されていた。 講演を始める前に、最初に昨年のスーパーGT第6戦SUGOで起きてしまった大クラッシュから復活までのドキュメンタリー映像を放映。 この映像のあと、山本選手は、「僕は昨年のクラッシュから現在の復帰に至るまで、お医者さんを含め非常にたくさんの人たちに支えてもらってここまで来ました。児童の皆さんも、学校に来るまでの間や私生活で、ご両親や先生たちに支えてもらって生活できています。皆さん、ぜひ、多くの人たちに感謝しながら、日々『ありがとう』の気もちをもって生活してみてください」と語りかけた。 すごく基本的なことではあるが、こうして日々生活していると、大人ですら忘れてしまうような、人として大切なテーマだ。筆者のようないい加減な人間がいっても説得力がないが、山本選手からだと説得力も高い。というかそのとおりだ。 続けて山本選手は、「自分の体を大切にしてください。体は自分が思ってる以上に弱いです。いつ何があるかわからない以上、日々を安全に過ごしてください」と、レーシングドライバーという命をかけて戦っている選手が直々に命の大切さについても語った。 とても簡単でありながら大切なこのふたつのことは、小学生でもきっとよく理解できたのではないだろうか。 このあとは、代表の児童より質問タイムがあった。まず、「スランプがあったとき、山本選手はどうしますか?」という質問に対しては、「自身でどこがダメなのかを分析する力をつけること。信用できる大人や先生を見つけて、まわりの人に相談するのが近道ですね」とアドバイス。 次の質問は、「長年プロの世界で戦っているわけですが、プロの世界に居続けるために必要なことはなんですか?」という、まるでレース現場にいる記者のような質問が出てきた。 この件に山本選手は、「どのジャーナリストよりもジャーナリストっぽい内容ですね……笑。これに関しては、どんどん出てくる若いレーサーたちの考え方や走り方をつねに取り込んで、真似して、自分に生かしてみるってことですかね。年齢に関係なく、上手い人や尊敬できる人を見つけて、参考にして日々成長することが大切かな」と語ってくれた。 たしかに、いまのスーパーフォーミュラやスーパーGTには、20歳前後の凄腕ドライバーが続々と参戦してきている。身体能力だってひとまわり以上年齢が違う若者と比べたら、不利な点も多いだろう。そんな激戦区であるカテゴリーで、常に優秀な成績を収めているベテランドライバーならではの視点だと、この回答を聞いて納得した。 小学生たちからは、「最後まで諦めないで、体に気をつけて頑張ってください!」と激励のメッセージが届けられた。 また、この日はなんと山本選手36歳の誕生日でもあった。児童たちからはサプライズでハッピーバースデーの合唱に併せて花束を贈呈。会場は大盛り上がり! 児童たちによる花道で見送られながら場所を移し、日本でもかなり珍しい、高等部の「情報科学部自動車整備士養成科」での講演だ。