2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体どうなる? 未来を担う新時代の照明とは
生産過程でも「環境配慮」を徹底
パナソニックEW社では1つの市場の終焉を新たな時代への転換点として、「環境にやさしいLED」を「環境にやさしく製造する」ための改革も推し進めている。 2012年の発売以来5000万台を出荷している主力のLED器具「iDシリーズ」を製造している新潟工場では、環境配慮型のものづくりを徹底。1973年の操業以来、消費電力の見える化や製造設備の見直しなど地道な活動を続けており、2017年にはグッドファクトリー賞、2018年には省エネ大賞・資源エネルギー庁長官賞を受賞するなど高い評価を受けてきた。 熊澤氏は「大変光栄な賞をいただいておりますが、これに満足することなく、さらなる省エネに向けたプロジェクトを我々は進めてまいります」と、省エネ改革への大きな意欲を見せた。 2020年度からは省エネ推進のためのプロジェクト体制を整え、重力や自然エネルギーを活用した電力を使わない生産性改善「からくり改善」など独自の取り組みにも力を入れている。 2023年には太陽光発電システムを増強し、CO2排出量を年間1140トン分削減。省エネ・創エネ活動での利益を原資に、再生可能エネルギーの買電やJクレジットの購入を行うことで、2024年度にCO2排出量の実質ゼロ化を成し遂げた。 今後も純水素型燃料電池を導入予定で、事業の使用電力を再エネで完全に賄う「RE100」、さらには新潟工場だけでなくライティング全製造拠点での2030年度のCO2ゼロ化を目指していくという。
リサイクル・リユースで経済の「輪」を作る
国際規制を受けてのLEDのさらなる普及、LED照明製造のグリーン化に加え、パナソニックEW社が近年力を入れているのが、照明器具のサーキュラーエコノミー実現に向けた実証実験だ。 サーキュラーエコノミーとは、資源や製品の価値を最大化し、資源の投入と廃棄物を最小限に抑える経済的循環を指す。 既に、主力のiDシリーズでの再生樹脂や再生鉄を使用したモデルチェンジを実施するなど、リサイクル材や代替素材、自社工場内の廃材を活用した商品製造・販売を行っているパナソニックEW社。 「工場内で出た廃材を回収してリサイクルする。これはある意味、大きな流れのサーキュラーエコノミーの中の『製造』の過程でもう一度くるっと回しているような形です」と、取り組みについて熊澤氏は説明する。 そして2023年度には自社製品のリユース展開・回収・再資源化の実証実験を開始。この実証実験では、北海道内に109店舗を展開する「生活協同組合コープさっぽろ」をフィールドとし、使用済み照明器具のリユースやリサイクルの可能性を探っている。 実証の流れは以下の通り。「コープさっぽろ」の主力店舗では、最新式の照明設備を導入することで客足を伸ばすため、数年ごとに照明を取り換えている。これまでは、付け替えた照明はそこでお役御免、廃棄されていたが、なかにはまだまだ使えるものも多かった。 そこで今回の実証では、廃棄されるはずだった照明の余寿命診断をパナソニックEW社が実施。使えるものを選別して、別の店舗の古い照明器具と交換する。古くなった照明器具は回収し、リサイクル処理を経て、再生素材とすることで、資源として再活用されていく仕組みだ。 2023年度の実証では、事業の有効性も確認されており、これが成功すればパナソニックEW社起点の大きな1つの輪、すなわち循環型経済を形成できる。 蛍光灯の国際規制を受けて大きく動き出す照明業界。これから先は、照明そのものはもちろん製造過程まで環境にやさしい新たな光で未来を照らしていく。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部