<高校野球>中軸は東大志望 頭脳プレー光る宇都宮「ライトゴロ」生んだ主体性 21世紀枠候補校
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が1月24日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難な環境の克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。20回目を迎える21世紀枠。全国9地区の候補校から関東東京・宇都宮(栃木)を紹介する。【岩壁峻】 【写真特集】歴代の「21世紀枠」出場校 学校創立は1879(明治12)年までさかのぼり、野球部創部も1896(同29)年と歴史がある。栃木県内屈指の進学実績を誇る県立男子校の宇都宮。部員19人ながら、2019年秋の県大会で8強入りした。 頭脳的なプレーを見せたのが、宇都宮商との3回戦だ。タイブレークの延長十四回に1点を勝ち越し、その裏に2死満塁のピンチを迎えたが、右前への打球を中山太陽(2年)が猛ダッシュで処理して右ゴロに仕留めた。事前に「打球が来たら狙う」と一塁手と打ち合わせていたという。宇都宮南を甲子園に春夏計3度導いた篠崎淳監督(55)を「発想になかった。監督のイエスマンだったらできない」と驚かせた。 試合で力を発揮できるのも、選手が主体的に練習に取り組んでいるからだ。例えば、体力トレーニング。陸上のハードルをまたいだり、くぐったりして股関節を鍛えることを想定していた篠崎監督に対し、背筋強化のために重りの入ったメディシンボールを上に投げるメニューを加えるように選手が提案する。藤田壮大(たけひろ)主将(2年)は「上半身と下半身を連動させるトレーニングを入れたかった。監督が自由度を高くしてくれるので、自分たちで考えながら練習メニューを決めることが多い」と明かす。 篠崎監督の指導により、中軸を担う中山は「思い切り振る」打撃を心掛ける。19年秋の県大会で打率4割、1本塁打をマークした。学業成績も学年トップクラス。19年春に卒業した部員が東大に現役合格しており、中山も東大を志望している。 地元では「宇高(うたか)」の愛称で親しまれる。部員は19年10月の台風19号被害を受けた宇都宮市内でがれき撤去といったボランティアに参加した。藤田主将は「地域に恩返ししたかった」。甲子園で初開催された1924(大正13)年夏の第10回大会で県勢初勝利を挙げた。選手たちは96年ぶりの甲子園という吉報で、さらなる恩返しを誓う。