<私の恩人>板東英二、上岡さんに教えられた「アマチュアでいなさい」
実際ね、出会ってしばらくして、2人で京都・河原町を歩いている時、それを身を持って教えてもらいました。繁華街・河原町のど真ん中ですから、通行人でごった返してます。上岡さんが、いきなり「空を指さして『ウワーッ!!』と叫んでみ」と言うたんです。ホンマに力いっぱい叫んだら、歩いてる人が必ず指の方を見るからと。
恥ずかしかったですけど、上岡さんは絶対に間違ったことは言わん人ですから、言われたように、ありったけの声を振り絞ってみると、みんなが一斉に空を見上げた。すぐさま、上岡さんが「これが一生懸命さと声の力や。知らん人の前で、これがいつでも平気でできるようになったら、アマチュアとしてスターになれる」という言葉をもらいました。この体験が、今にいたるまで、どの仕事でも僕の基本になっています。 実は、先日の会見をする前にも、上岡さんに電話をしたんです。電話がつながらなかったので、留守電に「まずは、きちんと謝罪させてもらいます。申し訳ありませんでした」とメッセージを残しました。折り返しの電話はなかったんですけど、40年の付き合いですから、その意味も分かっています。「あんたがそうするんやったら、それでエエやないか」。返事がないということで伝わる答えをもらいました。 ちょっとでもね、ちょっとずつでも、恩返しをしていけたらなと思っています。 (聞き手・文責/中西正男) ■板東英二(ばんどう・えいじ) 1940年4月5日生まれ。満州国生まれ、徳島県育ち。徳島県立徳島商業高校時代に全国高等学校野球選手権大会で甲子園に出場。3年時には、「1大会83奪三振」という甲子園最多記録を打ち立てる。高校を卒業し、59年に中日ドラゴンズに入団。11年の現役生活の後は野球解説者、タレントに転身する。日本テレビ系のクイズ番組「マジカル頭脳パワー!!」などで司会を務めたほか、TBS系ドラマ「金曜日の妻たちへ2」などにも出演し、俳優としても活動する。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年大阪府生まれ。大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」に出演中。