誰も言わなかった不都合な真実…日本の自然災害は「政治の人災」である《著名ジャーナリスト、怒りの警告》
---------- 2024年元日に発生した能登半島地震は私たちの記憶に生々しく、現地の被害は依然として継続している。地震のみならず、台風、火山噴火、酷暑など自然災害の深刻化は焦眉の課題のはずだが、いまや政府対応の不十分さが「政治の人災」として被災地を襲っている感すらある。 【写真】獄中14年、外資ファンドを手玉に取る手口を教えよう…「リーマンの牢獄」 災害とそれへの対応をライフワークとして取材し続けてきたジャーナリストの鈴木哲夫氏が、このほど『シン・防災論 「政治の人災」を繰り返さないための完全マニュアル』(発売・日刊現代/発行・講談社)を刊行した。政府も国民もいま認識しておくべき「災害激化時代の防災論」とは何だろうか? ----------
防災というテーマはジャーナリズムの使命
33年前の1991年6月。「自然災害と防災」が私のライフワークであり、使命とさえ思うようになったきっかけがある。 長崎県雲仙普賢岳で発生した火砕流。山の斜面を高速で一気に流れ、町を飲み込んだ。そこにいた消防団員やマスコミの取材陣などが行方不明になった。翌朝、当時テレビ西日本の報道記者だった私は、福岡からヘリで現地に飛んだ。明け方近くに炎も随分おさまったが、まだ一部では火の手が上がり、一面を白く降り積もった火山灰が覆っていた。陸上からはまだ到底現場には入れない。 そんなとき、眼下の一角に、溶岩で潰された車と、その横に灰を被って倒れている遺体を見つけた。 あのショックは永遠に忘れることはない。遺体を目の前にして、無力な自分を思い知らされ、また、それまで意気がっていた私の報道も、自然災害にあまりに無知であり無力であると突きつけられた。この仕事を辞めようとも思った。数週間ほど悩み続け、私が出した結論は、「防災というテーマはジャーナリズムの使命だ。平時にあっても常に追い続ける」と自分に課すことだった。 私はその後、阪神淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震……。地震だけではない、豪雨、台風、火山噴火、酷暑など、自然災害とそれへの対応を取材し続けてきた。近年、自然災害は人知を超え、常軌を逸するレベルになりつつある。 どれほどの命が奪われたか。被災者にはなんの罪もない。しかし、政府の対応は、時間も予算も大がかりで法改正にも時間がかかるとあって、過去の教訓をその後に生かすことをせず、根本的な防災対策に取り組んでこなかった。挙げ句には「未曾有の災害だった」などとその度に言い訳をして逃げてきた。度重なる自然災害の犠牲や被害は「政治の人災」と言えるのではないか。
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