誰も言わなかった不都合な真実…日本の自然災害は「政治の人災」である《著名ジャーナリスト、怒りの警告》
法律や既成の「平等」が壁に
今年、元日には能登半島地震が発生した。官邸の初動は明らかに遅かった。私はこの度刊行した『シン・防災論―「政治の人災」を繰り返さないための完全マニュアル』で徹底検証したのだが、対策本部を設置する経緯などを見てみれば、それは明らかだ。初動の遅れを挽回するかのように、岸田政権は中央指導で「やれることは何でもやる」と息巻いたが、「中央で旗を振る」こと自体、じつは過去の教訓を生かしていない。重要なのは、現場主義に徹することなのだ。 阪神淡路大震災では、右往左往していた官邸に、危機管理のエキスパートたる後藤田正晴元副首相が押しかけ、自社さ政権の村山富市首相に進言し、現地にベテラン政治家を派遣することになる。村山首相が「すべて現地で判断してくれ。現地が欲しいものは最優先で何でも叶える。法律違反というなら法律を変える。自分が責任をすべて取る」と現場主義に徹したからこそ、復旧へ動き出した。それをなぜ今回も実践しないのか。 また能登半島地震で、岸田政権は省庁の官僚らを送り込み、首相は「現地にミニ霞が関を作る」と豪語した。これも間違っている。 確かに実務は官僚がやるのだが、官僚や公務員は法律を犯したり、既成の平等概念を壊してまで物事を進められない。だが、災害時に法律や既成の平等は壁になるのだ。東日本大震災では法律によって使いたいところに公金を使えなかった。また、自治体は、避難所で食料や毛布の数が被災者の人数と同じに揃うまで配れなかった。寒さを少しでもしのぎ腹を満たせばいいものを、特定の場所だけ配ると不平等になるというのが理由だった。 つまり官僚を送りこんでミニ霞が関を作ってもしょうがないのだ。「一番困っている人たちを優先しろ。既成の平等などに縛られるな」と政治決断できる政治家、いわばもう一つの首相、もう一つの政府を現地に置かなければならないのだ。 このように過去の自然災害の教訓を生かせず、今年の能登半島地震でも繰り返した失政が多々あった。
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