誰も言わなかった不都合な真実…日本の自然災害は「政治の人災」である《著名ジャーナリスト、怒りの警告》
軽々しく「寄り添う」と口にする行政
政治・行政が常套句のように使う「寄り添う」という言葉がある。だが彼らは、果たして本当の意味が分かっているのだろうか。 13年前の東日本大震災。復興庁によると、今年3月時点に至っても、避難者は何と22900人もいる。全国に散っている。福島や宮城の太平洋側の故郷に戻りたいが原発問題や町の産業や経済が不安でいまなお将来を見通せない。いずれ帰るのか、いやこのまま避難地を永住の地にするのか、いまも選択を自らに課している人たちがたくさんいる。 「息子が来年高校受験だが福島の高校を受験させたい。おととし避難指示が解除されたが、やはり心配で戻っても大丈夫なのか。相当迷っている」(福島県双葉町に居住していた建築業者、現在・新潟県在住) 「道路はきれいになったが元の町並みはなく、もはや知らない場所。人口も減ったから経済はどうなのか。子供たちは独立して妻と二人。帰りたいが、果たして食べて行けるのか」(宮城県石巻市に居住していた和菓子店主、現在・茨城県在住) 被災者はあの日を忘れない。心の中でも、暮らしにおいても、時は止まっているとも言えるのだ。「寄り添う」というのは、そういう被災者が自らの意思で前を向いて進み出すそのときまで、インフラや経済や仕事やあらゆる復興政策をずっと継続していくことではないのか。軽々しく「寄り添う」などと口にする政治・行政はその覚悟を持っているのか。 私は今度の新刊で、過去の自然災害の現場で起きていた政治・行政の舞台裏、被災地の数々のストーリー、後藤田正晴、石原信雄、達増拓也、小野寺五典、石破茂ら、政治家や官僚、自治体の首長などの当事者の体験と言葉、さらには津波から命からがら逃れた芸人のサンドウィッチマンの故郷・東北での活動など、これまで防災に関わって取材してきたテーマを集大成して問題提起させていただいた。 読者の皆さん、政治行政をはじめとする多くの方々に活用していただけると幸いである。 ---------- 鈴木哲夫著 『シン・防災論 「政治の人災」を繰り返さないための完全マニュアル』 (発売・日刊現代/発行・講談社) 1870円(税別) ----------
鈴木 哲夫(政治ジャーナリスト)
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