どうなる?建て替え浮上の原宿駅 三角屋根・国立駅舎は復原へ
解体後も部材を保存 復原のため、駅隣接地購入
国立市は景観行政に力を入れている自治体です。国立市では、駅周辺の一部区域を除いて高層建築物は制限されています。そうした地域性もあって、市民も三角屋根の駅舎保存に賛同しました。 保存のために、駅舎を曳き家方式でいったん移動し、高架工事後に元の位置に戻すという計画が立てられました。しかし、同案は議会で否決されてしまい、頓挫します。議会で否決されたことで、国立駅の保存計画は暗礁に乗り上げました。 そして、工事リミットとなる平成2006(平成18)年を迎えます。それでも市と市民は、国立駅舎の保存を諦めませんでした。 「国立駅舎はいったん解体されましたが、部材は倉庫に保存されました。市はJR東日本が所有していた駅南側の隣接地を購入し、そこに三角駅舎を復原させることにしたのです。」(同) しかし、クリアしなければならない難題がいくつかありました。国立市は高層建築が厳しく制限されていますが、国立駅周辺は例外的に、容積率400%以上の高層建築が可能になっています。容積率の規制が緩和されている一方で、同エリアに立地する建築物は防火建築にすることが課されています。 国立駅舎は大正時代に設計されていますから、当然ながら現在の法律に適合した防火建築ではありません。そのため、昔の姿のまま復原できなかったのです。 「文化財に指定された建造物については、例外として防火基準を満たさなくてもよいことになっていました。そこで文化財指定を受けてから、駅舎を復原することにしたのです。」(同)
一筋縄でいかない歴史ある駅舎復活
そこまで駅舎保存にこだわったのは、市民に駅舎を残したいという強い気持ちがあったからです。しかし、気持ちだけで駅舎を保存することはできません。駅舎の復原には、費用の問題がついてまわります。 部材の保管料なども含めて、国立駅舎の復原には約9億6千万円が必要でした。しかし、国立駅舎の復原には、市の一般財源を投入しない方針にしています。 一般財源から費用を捻出しない理由は、国立市のシンボルを復原する事業とはいえ、市民に負担を押し付けるようなやり方は理解が得られない、と市側が考えたからです。そのため、国が市町村の都市再生整備計画に対して助成するまちづくり交付金を活用。「交付金が約2億1千万円、市が積み立てた基金が6億6500万円、ふるさと納税が8500万円。それらで費用を賄うことになったのです」(同) 一般財源を使わずに駅舎復原の資金を集めることは、容易なことではありません。文化財を残すことは、一筋縄ではいかないのです。 紆余曲折を経て、国立駅舎は2020年度末までに“復活”する予定です。 小川裕夫=フリーランスライター ※記事では、国立市の事業名に合わせ「復原」を使っています。