「しんどいときにする判断は、全部間違い」作家・岸田奈美さんが語る“大丈夫じゃない日々”の乗り越え方
作家・岸田奈美さんの人気エッセイシリーズ第3弾『国道沿いで、だいじょうぶ100回』。5月末に発売されてから一週間もたたずに重版になるなど、話題を集めています。 【写真5枚】話題の連続ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』の原作者、岸田奈美さんのインタビュー風景を写真で見る 「だいじょうぶ」と思えないことも起きる日常の過ごし方や、家族だからこそ感じる支え合うことの難しさなど、お話を伺いました。
視点を変えると「だいじょうぶになる」
日常の暮らしや家族との間に起こる目まぐるしいできごとを、笑い飛ばすようにエッセイで綴ってきた岸田さん。 新刊にも、岸田さんの身のまわりで巻き起こる、さまざまなトラブルが描かれています。手違いで桃が一度に68玉届く。運転免許の試験を受けに行ったら、コース上に逃げ出した馬がいる、などなど。コミカルな文章に思わず笑ってしまうものの、自分の身に起きたらつらいと思うのですが……。 岸田奈美さん(以下、岸田)「そうですよね。なぜこう、てんやわんやなことが起きるのか……(笑)。渦中にいるときは必死で、笑える余裕はないです。もともと目の前のことでいっぱいいっぱいになりがちな性格なので、何かが起きたり、壁にぶち当たったりするたびに、どうしよ、しんどい、と大騒ぎですよ」 思わず“しんどい”と感じてしまうのは、自分や家族のことだけに限らないと、岸田さんはスマホを取り出します。 岸田「こうやってスマホの画面を見ているだけでも、ちょっと、しんどく感じるときがないですか? SNSで毎日誰かが炎上し、批判を浴びていて。どうしようもなく、つらい境遇にある人もいる。画面越しにいろいろな人が発する言葉を見ていると、ときどき『自分には何もできない』と無力感に襲われることも。 スマホはいつも、メールやLINEのように、個人間でメッセージをやりとりするのに使うものだからかな。まるで自分に向けて『つらい、助けて』と言われているように感じてしまうときがあります」 そういうとき、岸田さんはどのように気持ちを切り替えているのでしょうか。 岸田「私の場合は書くことで、自分の視点がすっと変わる感覚があるんです。まるでカメラの位置が、自分の目玉から自分の頭上に移動するように、撮影する画角が変わり、俯瞰の映像になるというか。 状況は何ひとつ変わっていなくても、俯瞰して見るだけで『なんだ、なんやかんや言っても、だいじょうぶだな』と思えることがある。捉え方次第で、人は『だいじょうぶになる』んですね」