【Apple担当役員インタビュー】10周年のApple Watch、私たちの生活をどう変えた?
多くの人にとって運動の計測は、Apple Watch以前は歩数のカウントだった、とブラニック氏は指摘します。自身のパーソナルトレーナーとしてのキャリアに照らしても、歩数カウントだけでは運動量と移動量の計測しかできず、運動強度と頻度については分からない、という気づきがありました。 「重要なのは、量だけでなく、運動強度と頻度なのです。 自分は運動している!という人も、その運動が早歩きレベルであれば、心臓の健康や筋力的なメリットをそれほど得られるレベルではありません。 あるいは、毎朝10キロ走っていても、その後オフィスで長時間座っているかもしれません。長時間座っていることで、いくら運動していても、健康リスクが高まります。 だからこそ、運動量・運動強度・運動頻度の3つが重要で、素晴らしいデザイナーたちと協力し、それを最もシンプルに表現する方法を考えたのです」(ブラニック氏)
3つのリングはカスタマイズ可能で、達成するための条件を、それぞれの人に合わせて調節できます。自分に合った調節をして、リングを閉じようと心がけること自体が、人々にとって与えている健康と運動に関する洞察である、とブラニック氏は指摘します。 「Apple Watchによってもたらされた、「人々をやる気にさせ、体からのインスピレーションを受け取る」という行動変容が起きました。Apple Watchが作り出した新しい生活習慣は“測定がモチベーションになること”でした」(ブラニック氏) ■ヘルスケアチームとの連携という「最高の経験」 フィットネスチームを率いるブラニック氏は、Apple Watchのプロジェクトを、科学に基づいて構築している、と強調しました。その上で恵まれていることとして、「ヘルスケアチームと一緒に仕事ができること」を挙げました。 「Appleには、フィットネスチームと並んで、ヘルスケアチームがApple Watchのプロジェクトに携わっています。このことは非常に重要で、最大の喜びともいえます。 フィットネスは、健康と密接に関係しています。日常生活で体を動かすことに対してモチベーションを高める機能を作ることは、もしかしたら命を救えるかもしれないのです」(ブラニック氏) ブラニック氏は、10年前までは、ウォーキングやランニングの際に、自分がどれだけの距離を走ったのか、気軽に計測できなかった、と振り返ります。同時に、その時の心拍数や運動強度、努力の度合いといった数値も、発見することはできませんでした。 今から考えれば、自分自身のことについてあまりに無知すぎた、とすら指摘できるのです。 「私たちが目指すのは、テクノロジーが健康とフィットネスにおいて、非常に重要な役割を果たすことだと思います。何億もの人々の良い習慣の維持を手助けし、計測がモチベーションになり、健康に良い影響を与える姿が見たいのです。 Apple Watchを通じて、あなたが自分自身の体で起きていることをもっと知りたいと考えるようになりました。そして、知れば知るほど健康を管理できるようになり、良い影響を与えることにつながるのです」(ブラニック氏) ■命を助けるApple Watchのアプローチ Appleでヘルスケアを担当する役員で医師のサンブル・デサイ氏は、「Apple Watchのおかげで命が助かりました」という手紙が頻繁に届くといいます。デサイ氏は医師として、この現象を次のように評価しています。 「人々の生活に、より大きな影響を意味のある方法で与えたいと願い、ヘルスケア分野に取り組んでいます。 この取り組みは、正確なカロリー計算のために、精密な心拍計をApple Watchに搭載したところから始まりました。 しかし医学的な視点に立つとき、手首に常に心拍計を装着していることで得られる知見がたくさんあります。アレルギー反応や心臓発作、心房細動など、個人の健康問題に関わる気づきが得られます。そこで“不規則なリズムの通知”を追加するところから始めました」(デサイ氏)