「旧キット箱絵風ザクキャノン」「アニメ風塗装のエアリアル」“塗装”にこだわりガンプラ創作を楽しむモデラーたち
誕生から40年以上が経った今なお、幅広い世代を魅了し続ける「ガンプラ」。2023年3月末時点のガンプラの累計出荷数は7億6000万個を超え、世界的なロングセラー商品となっているが、そんな同商品の魅力を発信し続けているのが、自由な発想で“ガンプラ創作”を楽しむモデラーたちだ。 【画像】旧キット箱絵風に塗装された「MGザクキャノン」 本稿では、「旧キット箱絵風」にアレンジしたガンプラを製作するニコボル(@nicovol48)さんと、アニメ風塗装のガンプラを手掛け、SNSに投稿しているけむしファクトリー(@plafactory_k)さんをピックアップ。製作にいたる経緯や、製作過程でもっとも苦労したポイント、この作品を通じて学んだことなどを聞いた。 ■「地面や岩に加え、背景も自作」イラスト風模型へのこだわり(ニコボルさん) イラスト風の塗装や明暗が強めの塗装が好みで、製作の参考にするために、普段からよくガンダムなどの画集を見ているというニコボルさん。お気に入りは「ガンプラ・パッケージアートコレクション」のMSV・ボックスアートで、「MGザクキャノンのキットがカラー違いで再販された際、いてもたってもいられず、上田信先生の旧キット1/100のパッケージアートをお手本とした箱絵風塗装に挑戦してみたんです」とコメント。 製作過程でもっとも難しかったポイントに関しては、「キット本体と旧キットのボックスアートはプロポーションなどが違うので、細部をお手本に近づけつつ、ディテールを取捨選択するなどして、違和感のない仕上がりにするのに苦労しました。また、飾った状態で箱絵風に見えるヴィネットのようなものを作りたかったため、ガンプラだけでなく地面や岩も製作して、背景は絵を描きました」とのことで、特に絵は心得や経験がほとんどなかったため、かなり苦労したという。 イラストの描き方を紹介するYouTubeをチェックしたり、書籍を読み漁ることで、一から絵の勉強もしたそうで、「何度も描き直しをすることで、なんとかお見せできるものに仕上げられたんじゃないかな……という感覚です」と話す。 最後に、箱絵風塗装にこだわってガンプラを作り続けるなかで感じた、“もっとも楽しいと思えるポイント”についても聞いてみた。「イラスト風模型の製作は、ハイライトや塗装傷を入れる段階になると印象がグッと変わるといいますか。完成形が見えてきて、一気にかっこよくなる瞬間があるんです。その瞬間が本当に好きなので、それを感じられることを楽しみにしてガンプラを作っている……といっても過言ではないですね」 ■描き入れる影には説得力を持たせることが重要(けむしファクトリーさん) 「ガンダム・エアリアルは曲線が比較的多めの部類に入るガンダムタイプで、その曲線にどう影を落とし込むか?どうレフを当てるか?そういった点を意識しながら、トライ&エラーをくり返す形で製作に入りました」と話す、けむしファクトリーさん。毎回、アイデアやインスピレーションが湧くまで待つのではなく、好きな機体を見つけたり、Instagramのフォロワーからリクエストがあれば、無策でも飛び込むスタイルで製作に取り掛かっているという。 今回製作したガンプラでは、太腿部分の凹凸のなさに苦戦した模様。「太腿部分の影をどう入れるか悩みました。すねや腕などの細かいパーツなら面積は狭く、影と光のメリハリをつけやすいのですが、太腿は曲面の面積が広いので、普通に影入れをしただけではのっぺりとしてしまって。基軸にしやすいディテールも入っていないため、影の境界や位置が設定しづらく、それなりに壁を感じました」 その解決策として用意したのがフラッシュライトだそうで、そちらを用いてガンプラを360度、グルッと何回も照らし出しながら影の動きをチェック。そうして頭のなかにモデルを落とし込んで、影を入れていったという。「この方法で頭の中のイメージ通りに影を入れていくと、けっこういい感じに仕上がることが多いんですよ。エアリアルの場合はディテールなどに沿わせず、何もない面に影を描き入れて。レフの当て方で説得力を引き出すように頑張りました」 ちなみに、けむしファクトリーさんによると、こちらの作品を手掛けたことで、“影の入れ方”に関する新たな発見もあったという。詳細を聞いてみたところ、「曲面に対する影のアプローチの引き出しを手に入れられたのは大きいなと思います。自分で影を描き入れてしまえば、本来ならディテールがないところにもそれがあるように見せられる……といいますか。そうした説得力の持たせ方やレフの重要性をあらためて学ぶことができました」といった意見を聞かせてもらえた。 取材・文=ソムタム田井 (C)創通・サンライズ