「粗悪品が届く」「情報が抜かれてる可能性も」と話題の中華ECサイトのTemu。テレビで広告が急増中の今、“意識すべき”現実とは?
環境が重要だと人々はいっているものの、Z世代はファストファッションで何枚もの衣類を購入する。企業人も、企業活動を担うときにはSDGsと叫んでいるが、生活者に戻るとSDGsにかかわらず安価な商品を買う。人間とはそういうものだ、といってしまえばそれまでだが、なにかひっかかる。 ■ECサイトTemuの大躍進 現在、ECサイトのTemuが話題になっている。動画やテレビCMでも、このところ見た人は多いだろう。先日はスーパーボウルのCMがニュースになった。Temu自体は、どのように表現していいかわからない。衣類や雑貨を中心とした激安ECといっておけばいいだろうか。このところ急速に知名度をあげている。
該当のサイトを見ると、つねにセール、90%オフ、コスパ最強、数量限定クリアランス……といった言葉が並ぶ。そのほとんどが価格しか訴求性をもっていないと告白しているようで、実に清々しい。同アプリのキャッチフレーズ「億万長者気分でお買い物」はきわめて言い得て妙だ。90%オフといった表現を見るたびに、「そもそもその金額だったんじゃないのか。景品表示法的に大丈夫なのかよ」と私は笑ってしまったほどだ。 Temuのビジネスモデルは明確だ。中国中にはりめぐらされたサプライチェーンを有し、調達から製造・出荷までを一貫して管理する。これによりコストを引き下げる。同社自体は在庫をもたずにリスクを軽減している。同社はアプリを開発し、売れる商品を探し、企画し、マーケティングを工夫し顧客数を最大化する。
90%オフとあるが、配送料は基本的には無料で、かつ90日間までは返品も無料で受け付ける。日本には「安かろう、悪かろう」ということわざがある。私のまわりのTemuユーザーに訊くと、そもそも安くて質が悪いことを前提としているから、粗悪品が届いても落ち込むこともない、という。日本人は品質を求めるんじゃなかったのかね。 そして、これは中華系企業にとって珍しいことではないが、中国にあるホールディングス企業ではなく、各国にある別会社を強調する。たとえば実質的には中国の本社が支配していても、シンガポール企業と自称しているケースがある。Temuもアメリカに登記しているから、アメリカ企業と自称したいだろう。実際に、あまり中国系ECといいたがらない傾向があるようだ。