往年のNAオーナーが楽しめる「大人のロードスター」 電動ハードトップのRF
ある開発者はこう言った。「これはマツダの正式見解ということではなく、個人的な考えですが、ロードスターは馬力指向の世界は目指さないと思いますよ。そこはまた別のクルマがあっても良いと思います。ロードスターは『誰もが幸せになる』という言葉が表すように、とんがった世界を目指すのではなくて、みんなが楽しく乗れることが大事です。だから低速を大切にしています。エンジンの出力を上げていこうとすれば必ず重くなります。それはやりたくないんですよ。やってはいけないと言うか、重くすると必ず色んなところが更に重くなって、デカいタイヤ履いてボディ固めてって、それはどうも違うクルマだと思うのです。ロードスターの世界観から少しずつずれて行きかねません。いやそういうバージョンがあっても良いんですけど、ロードスターの本質ではありません」。 決して、NCが失敗作だと言っているわけではない。その時その時でマツダは真剣に、出来うる限り笑顔になれるロードスターを目指して来た。NDロードスターの主査であった山本氏は言う。「私たちがどんなに一生懸命NDを作ったからと言って、歴代ロードスターのオーナーに、今乗っているクルマを手放して乗り換えてくれと言ってはならないと思います。NAもNBもNCもみな素晴らしいロードスターです」。
数値よりもこだわった3つの「感」
さはありながら、マツダも進歩する。経営環境も変わる。その中でベストを尽くして来たのだが、一方でもやもやしたものも残ったのだと言う。モデルチェンジの度に、先代モデルの問題点を洗い出し、それを懸命に改善してきた。しかしいかに数値的に性能を向上させても、一台のクルマとして見た時に、初代を越えられていないということは認めざるを得なかったのだ。 定量的に計測できる性能で言えば、それは明らかに進歩しているにもかかわらず、初代の壁は高かった。クルマがドライバーに与える幸せが増えたかと言えば、そうならなかったことは自分たちが一番分かっていた。だからNDは原点回帰を掲げて、数値ではなく「感」に集中した。 さて、すでに述べた通り「感」を実現するために重要なポイントに重量がある。そこでクルマをコンパクトにした。文句なしの正攻法だ。小さくすれば当たり前だが軽くなる。NDモデルを先代NCと比べて見よう。 ・車両重量:マイナス130kg ・全長:マイナス105mm ・全幅:プラス15mm ・全高:マイナス10mm ・ホイールベース:マイナス20mm ・フロントオーバーハング:マイナス45mm ・リヤオーバーハング:マイナス40mm