JAL機長2人飲酒問題、国交省が業務改善勧告 口裏合わせや検査不備を指摘
国土交通省は12月27日、日本航空(JAL/JL、9201)に対して行政指導の「業務改善勧告」を行った。現地時間1日に、豪メルボルン発成田行きJL774便(ボーイング787-8型機、2クラス186席仕様、登録記号JA840J)の出発が、機長2人の飲酒で3時間以上遅れたことや、2人が口裏合わせをして隠ぺいしていたことなどによるもの。今年5月の厳重注意を受けた再発防止策などが十分に機能していないとして、2025年1月24日までに再発防止策を提出させる。 【写真】JL774便に使用されたE12仕様の787-8 ◆副機長は過去にもアルコール事案 国交省航空局(JCAB)によると、機長2人の飲酒事案は6日夜にJALから報告があり、航空法に基づき17日と18日に立入検査などを実施。その結果、機長と副機長が意図的に過度な飲酒をし、口裏合わせをして隠ぺいしていたことに加え、JALでアルコール検査が適切に実施されていなかったことがわかったという。また、5月27日に行政指導の「厳重注意」を受け、6月11日に国交省へ提出した再発防止策が、十分に機能していなかったことなどが確認されたという。 国交省の調査では、4点の事実が確認された。機長と副機長が、法に基づき認可を受けたJALの運航規程で定められた飲酒量の制限を認識しながら、乗務前日に過度な飲酒を行った。また、両者が口裏合わせをし、3日夕方に過度な飲酒を認めるまで、両者は虚偽の説明を会社側に行っていたことがわかった。 JL774便は、機長と副機長、副操縦士のパイロット3人1組で乗務。このうち、管理職である機長が2人とも飲酒問題に関わっていた。 JALの運航規程に基づく乗務前アルコール検査は、出発前ブリーフィングに先立ち、乗務するパイロットが一緒に実施することになっているが、機長と副操縦士が乗務前アルコール検査を実施し、出発前ブリーフィングを開始後も、副機長はアルコールが検知されなくなるまで自主的な検査を続け、乗務前アルコール検査を実施しなかった。また、この自主検査には空港所の担当者が立ち会っていたが、同社の運航本部の担当部署に詳細な情報が伝達されず、担当部署は誤検知と判断し、パイロットの交代などの必要な措置がとられなかった。 この副機長は、過去にアルコール検知事案を発生させていたことも判明。国交省は「懸念のある運航乗務員に対する管理が十分でなかった」と指摘している。 JALの社内規定では、乗務前のアルコール検査で、アルコールゼロを示す「1リットルあたり0.00mg」を確認後、パイロットを乗務させている。検査に加え、開始12時間前に体内に残るアルコール量を、純アルコール換算で40グラム相当の「4ドリンク」以下に自己制限するよう求めている。 ◆12/20にも不適切検査 また、メルボルン事案発覚直後の20日に、成田発サンフランシスコ行きJL58便の副操縦士に対する乗務前アルコール検査が、適切に実施されていなかったことが判明。本来は出社後に検査を行うべきところ、遅延の影響を少なくするため、JALの運航本部の担当部署の指示で出社前に行っていたことがわかった。この検査でアルコール検知はなかった。 これらの事実から、国交省は「5月の厳重注意を受けた再発防止策が十分に機能していたとは言えず、これらの事案の発生に至った」と結論づけた。 業務改善勧告の内容は4点。飲酒対策を含む安全確保に関する社内意識改革、運航乗務員の飲酒傾向の管理の更なる強化、アルコール検査体制の再構築、厳重注意を受けた再発防止策の定着状況の継続的な確認を含む安全管理体制の再構築を挙げた。 JALは27日、「本年5月に厳重注意を受け、わずか半年後に再びアルコールに関わる不適切な事案を発生させ、 お客さまの信頼を損ねてしまったことを極めて重く受け止め、全力で再発防止を図ってまいります」とのコメントを発表した。 国による処分は、もっとも軽い「口頭指導」から「厳重注意」「業務改善勧告」までが行政指導。業務改善勧告より重いものは行政処分の「事業改善命令」で、「事業の全部または一部の停止命令(事業停止)」が続き、もっとも重い処分は「事業許可の取り消し」になる。 このうち、JALは事業改善命令を2018年12月と2019年10月に受けており、いずれもパイロットの飲酒問題によるものだった、
Tadayuki YOSHIKAWA