ランクル250の元ネタは55/56型だった?映画「ミスト」は最後のオチに注目【映画の中のクロカン四駆たち】
55/56型は当時のラグジュアリー4WDに対抗するために開発
そもそも55/56型は、「ジープ・ワゴニア」を筆頭とするラグジュアリー4WDに対抗するために開発された。40系の実用性や堅牢性は北米でも高く評価されていたが、いかにも“ジープ”臭く、ダッシュボートや床は剥き出しであった。この頃は、アメリカで安全基準が強化されている時期でもあり、ステーションワゴンスタイルで乗用車的なモデルを…ということで生まれたわけである。 それ故、ダッシュボードは樹脂パネルで覆われ、フロアにはカーペットかビニール、シートもレザー調ビニールトリムのものが装着されていた。リアゲートはジープ・ワゴニアのような下方開きで、なんと窓ガラスを電動で下げてから開けるという機構が採用されている。しかし、これは実用的には面倒という想いが開発者にもあったのか、観音開きタイプも用意された。 改めて今見てみると、とにかく各部がシンプルで、素っ気ないほどだ。だが、このシンプルさがたまらないのである。いまで言う高級SUVを標榜したのだが、ジープ・ワゴニアやその後出たチェロキーと比較すると、まるで雰囲気が異なっている。そこがウケたのか、北米でも愛好者が多く、彼の地では「ムース(ヘラジカ)」の愛称で今も親しまれている。 ちなみになぜ「50系」と言わないのかというと、これはロングボディしかないからだ。企画ではショートボディも考えられていたようだが、結果的に中止された。また、56型は1975年に2F型エンジンを載せた際に与えられた型式で、日本国内のみの呼び方となる。
映画「ミスト」に55/56型ランドクルーザーの80年代「四駆ブーム」のカスタムが登場
そんな55/56型が、重要なアイコンとして登場するのが、映画「ミスト」だ。スティーブン・キングの「霧」という小説を映画化したもので、よく理不尽なエンディングの作品として挙げられることが多い。 登場するのは北米仕様のFJ55LGで、これにクラシカルなグリルガードが付けられている。また、映画のストーリー上、ルーフに4灯、フロントに2灯のフォグランプが付けられ、左側Aピラーにもサーチライトを装着するなど、80年代「四駆ブーム」の頃のカスタムを彷彿させる車両だ。 登場する車両は非常にコンディションが良く、日本なら喜んで買う人が多いと思う。走っている姿はやはりエレガントで、今もって色褪せていないところが先見性の高さを感じさせる。やはり、このクルマがなかったら、その後の60系を源流とする300系への系譜は生まれなかっただろう。 映画は賛否両論あるが、個人的にはおもしろいと思う作品だ。低予算の割りに、シチュエーションがいいため飽きない。特に最後のオチは、「ええっ!」と思わせる切ないものだ。他にも55/56型が出てくる映像作品はあるが、これがもっともディティールが分かりやすいと思う。ランクルファンの人は、ぜひご鑑賞あれ。
山崎友貴