MIKIKOさん 羽生結弦さんは「お主、まだその才能を隠し持っていたのか?」の連続 30歳カウントダウン
羽生結弦さん(29)が、30歳の誕生日を迎える7日の埼玉公演(さいたまスーパーアリーナ)で幕を開ける「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」で、演出を担当するのが、日本を代表する演出振付家のMIKIKOさん。「GIFT」「RE_PRAY」も担当したMIKIKOさんが「プロスケーター羽生結弦」の進化や、ともに紡ぐ「ICE STORY」にかける思いを明かした。(取材・構成=高木 恵) 【写真】華麗な演技を披露する羽生結弦さん ―まず「Echoes of Life」の演出の話が届いた時の気持ちは。 「『RE_PRAY』で全力を出し切ったばかりの頃にいただいたお話だったので、1年もたたない中で新作を作れるのかは正直不安でしたが、すぐに『次は何ができるだろう?』と考え始めていました」 ―「GIFT」での経験や学び、得られた感情は前回の「RE_PRAY」にどのように生き、今回の第3弾にどうつながっている。 「どんどん思い描く理想の形に近づいていっている感覚はあります。ICE “STORY”としているので、ショーを見ているような映画を見ているような、2Dの世界と3Dの世界が絶妙なバランスで交錯していく新感覚の作品が理想です。『RE_PRAY』はゲームというモチーフでつないでいき、画面の中の世界をそのまま会場に持ち込むような演出を目指しました。今回は羽生くんが書き下ろした一本のストーリーが作品になっているので、過去の2作品で得た学びを元に、より物語の世界に没入していただけたらと思います」 ―毎回プロジェクションマッピングの美しさが圧倒的。演出でリンク一面をキャンバスのように使うことができるアイスショーならではのこだわりや楽しみは。 「スケートでしかできないスピード感やダイナミックさを生かせるように、振り付けと映像のリンクにはこだわっています。正確性の高い羽生くんの滑りとプロジェクションの相乗効果は本当に素晴らしく、一観客としても楽しみです」 ―「鶏と蛇と豚」(※1)はMIKIKOさんが初めてフルで振り付けをした演目。選曲の理由と、振り付けで大切にしたことは。 「初めて『RE_PRAY』の原案を読んだ時に、『鶏と蛇と豚』の歌詞や楽曲の世界観が思い浮かび、この曲を提案してみました。進むしか選択肢がない道を、苦しみもがきながらも進んでいく羽生くんの姿が美しすぎて怖い!と感じるような振り付けが頭に浮かんできました。むき出しの感情を上半身の振り付けで伝えられるように意識して作りました」 ―「RE_PRAY」は羽生さんにとって初めての単独ツアーだった。ツアーならではの新たな発見は。 「演じる方はモチベーションや体力をキープするのは大変だと思いますが、同じ演目でも、毎回違う作品に見える驚きがツアーならではの醍醐(だいご)味だなと思います。演出面も会場に合わせてブラッシュアップしていくのがとても楽しかったです」 ―競技者時代から大会後のエキシビションにも、これでもかというほどの全力を注ぐ姿が印象的な選手だった。最も近くでショーをともに作り上げているMIKIKOさんから見て、羽生さんの熱量、努力、探究心はどのように映る。 「『お主、まだその才能を隠し持っていたのか?』といまだに驚かされることの連続です。羽生くんは努力する天才なので、私も含め周りのスタッフも気合と覚悟が必要ですが、この相乗効果はものづくりにおいて理想的な関係だなと思います。でもあの熱量が彼にとっては当たり前でしょうから、これから先も無意識に影響し続けてほしいです」 ―7月でプロ転向2年を迎えた。MIKIKOさんから見た「プロ羽生結弦」の進化、変化は。 「確実に視野が広がったと思いますし、新しいことに挑戦することを怖がらなくなった気がします。今までため込んできたスケート以外のオタク気質(褒め言葉)が作品作りに生かされてきていて、表現者としてもクリエーターとしても進化していると思います」 ―プロ中のプロのMIKIKOさんにとっての「プロフェッショナル」とは。 「信じる力、諦めない力、楽しむ力」 ―同じプロの表現者として羽生さんと見る景色は、どんな景色なのか。 「生々しく、美しく、静寂で、神聖な景色です」 ―「Echoes」の開催リリースに「人生の旅路や成長をテーマに『命』とは、そして『生きる』ことの本質を問う物語」とあった。どんなツアーにしたい。 「見にきてくださったお客様の心に届くように、全身全霊で作っています。一人でも多くのお客様に、明日からの『生きる』力になれるようなツアーになったらうれしいです」 ―公演初日は羽生さんの30歳の誕生日。30代を迎える羽生さんにメッセージを。 「やっと30歳! 年齢が追いついてきてくれましたね。少年のようなピュアさと神視点の達観さを武器に30代にしかできない経験を重ねて、ますますかっこいい人間になって世界を救ってください!」 (※1)「RE_PRAY」で披露された3つの新演目の中の一つで、椎名林檎の曲。直線の狭い空間内で赤い光に照らされながら、黒い衣装で妖艶(ようえん)に舞った。 ◆羽生さんの過去の「ICE STORY」シリーズ ▼GIFT 23年2月26日、スケーター史上初の単独東京ドーム公演を開催。新曲を含む12演目を2時間半にわたり熱演した。3万5000人が来場。 ▼RE_PRAY ゲームの世界の倫理観や価値観が盛り込まれた、初の単独ツアー公演。23年11月から24年4月まで埼玉、佐賀、神奈川、宮城を回った。約2時間半、12演目を披露。 ◆MIKIKO ダンスカンパニー「ELEVENPLAY」主宰。演出振付家として、アート・音楽・テクノロジーの世界で多岐にわたり活躍。Perfume、BABYMETALをはじめとするさまざまなアーティストのMV・アニメ・CM・舞台などの振り付けを手掛ける日本を代表する振付師。 ◆「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」 ▼埼玉公演(さいたまスーパーアリーナ) 7、9、11日 ▼広島公演(広島グリーンアリーナ) 2025年1月3、5日 ▼千葉公演(ららアリーナ東京ベイ) 2月7、9日
報知新聞社