<城が語る>ロンドン世代が生み出したハリルJの新たなサッカー観
後半の頭から本田を入れ、20分には香川も投入した。35分の原口の決勝ゴールを生んだのは、左サイドから本田と長友のワンツーでサイドバックの裏のスペースをつき、崩した連携から生まれたもの。長友のグラウンダーのクロスをうまく流した香川のワンプレーも見事で、原口に冷静にゴールを狙わせる時間を作った。 ひとつの時代を作ってきた本田、長友、香川だからこそできる、彼らの世代の阿吽のサッカー観に、新世代の原口が融合した瞬間だった。ハリルホジッチ監督は、ベンチスタートとなった本田、香川、岡崎らにジョーカーという言葉を使ったが、私はうまいマネジメントだと見ていた。スタメンを外された本田の心境は想像に難くない。彼らがまたモチベーションをリセットしてコンディションを上げてくることが、チームに間違いなく相乗効果を生む。今後はロンドン五輪世代の勢いだけでは、勝てない局面も出てくるだろう。私は、慌てて世代交代を進める必要はないと考える、ロンドン五輪世代と、本田らの世代が融合してチーム力をアップしていくのが理想なのだ。 ただ課題も残った。ディフェンスラインを高く保ちながらも、裏をケアしていたが、中盤でのミスも目立った。ひとつ間違うと命取りになるし、失点したシーンでは、誰が、どこに入って、どう守る、という規律が不徹底だった。サウジはどちらかといえば、ボールを持って“こねてくれた”ため、ディフェンスを立て直す時間があったが、もしシンプルに攻められていれば、厳しい展開を招いたのかもしれない。 そのあたりに課題は残るし、来年3月から再開する最終予選にむけて、各自が所属チームでコンディションを調整してパフォーマンスを上げてくる必要もあるだろう。オーストラリアがタイに引き分けたことでグループBの2位に浮上したが、チームがこのまま成長していかねば、また壁にぶつかることになる。 (文責・城彰二/元日本代表FW)