【和田彩花×村上由鶴】きっかけはアイドル時代の違和感。アートとフェミニズムを考える【国際女性デー特集】
国際女性デーを記念したスペシャル企画に、昨年、光文社新書より『アートとフェミニズムは誰のもの?』を上梓し注目を集める写真研究者の村上由鶴さんと、アイドルグループ「アンジュルム」の元メンバーで、現在はソロで音楽活動をしながら、アイドルや美術に関する情報発信を精力的に行っている和田彩花さんが登場。アートやフェミニズムへの関心、大学院への進学など、多くの共通点を持つ同世代の二人に、お話を伺いました。 【写真】オルタナティブアイドル・和田彩花×写真研究者・村上由鶴 フォトギャラリー
――お二人は今回が初対面だそうですが、お互いにそれぞれのことが気になっていらしたと伺いました。 和田さん:村上さんのことは、ネットで本を探しているときに、新書『アートとフェミニズムは誰のもの?』を見つけて知っていました。そして最近も、オンライン報道番組『ポリタスTV』で、彫刻家兼評論家の小田原のどかさんと対談されている映像を拝見して。「素敵な方だな」と思っていたところにちょうどこの対談のお話が来たので、お会いできてうれしいです。 村上さん:見ていただいていたんですね、うれしいです。私は、TBSラジオ『アフター6ジャンクション(※現・アフター6ジャンクション2)』に和田さんがご出演なさっているのを聴いたときから、ずっと気になる存在でした。 和田さんは、“アートとフェミニズムについて考える人なら全員通る”と言ってもいい、若桑みどりさんの『イメージの歴史』を紹介されていましたよね。私自身、あの本は去年出版した『アートとフェミニズムは誰のもの?』を書く際に参考にした一冊で、「これを紹介するとは…!」と驚いたのを覚えています。 もともと、和田さんがアートに興味を持ち始めたのはいつ頃なんでしょうか? 和田さん:15歳のときですね。ある日、仕事の入り時間を間違えて少し暇ができたので、母と一緒に、三菱一号館美術館の開館記念展『マネとモダン・パリ』に行ったんです。そのときに、19世紀のフランスの画家・マネの作品に衝撃を受けて。 それまでは勝手に、“美術作品は美しいもの”というイメージを持っていたけれど、そこで展示されていた絵画には、黒が多用されていたり、倒れた人が描かれていたり…美しいだけではなかったんですね。そこからアートに心奪われてしまい、大学と大学院ともに美術史を専攻しました。村上さんは? 村上さん:私は大学で写真学科に入学したのですが、作品づくりをしていく過程で、いわゆる「広告などでよく目にする写真」と「写真が使われている現代美術」の間にある隔たりがすごく気になるようになったんです。 そんな中、あるときフランス人写真家、ソフィ・カルの『ヴェネツィア組曲』という作品に出合いました。それは、ソフィ・カルが見知らぬ男を尾行して撮影した写真作品なんですが、その続きとして、ソフィ・カルが探偵を雇って自分を尾行させる作品がある。「探偵が撮る写真が作品になるなら、そもそも写真家とは何なのか」と衝撃を受け、写真についてさらに突き詰めて考えたいと思うようになりました。 また大学の卒業制作に取り組む過程で、ゼミの先生から「これでは卒業させられない」という評価を受けたことも、学びを深めたいと考えるようになった理由のひとつです。自分ではとても気に入っていた作品でもあったので、「自分の作品について、私は十分に語る言葉を持っていない」と感じたんですね。結局大学院から博士課程に進み、今は写真の研究や現代アートに関する執筆だけでなく、人権啓発の仕事もしています。