【和田彩花×村上由鶴】きっかけはアイドル時代の違和感。アートとフェミニズムを考える【国際女性デー特集】
大きな変革のために諦めずにひとりひとりが自分のできる行動をし、思考し続けるプロセスこそがフェミニズム(村上さん)
――アートやフェミニズムが抱える問題に向き合い続けていると、「この状況を変えることはできないのではないか」と、時に無力感を抱いてしまう瞬間があるのではないかと想像します。お二人はそんな気持ちと、どのように向き合っているのでしょうか? 和田さん:夫婦別姓の導入など、なかなかスムーズに進まずもどかしい気持ちになることもありますが、自分はわりと前向きに活動できていると思っています。むしろ、トークイベントなどで同じような志を持った人に会うと本当に感動して、ポジティブに頑張ろうと勇気をもらえる。 村上さん:そういう仲間がいるのは心強いですよね。私は、フェミニズムを長期戦だと考えています。じわじわと広がる草の根的な活動であり、変化にはとても時間がかかる。すぐに現状を変えることはできなくても、大きな変革のために諦めずに一人一人が自分のできる行動をし、思考し続けるプロセスこそがフェミニズムであると考えているし、次の可能性につながると思っています。 例えば先日、勤務している人権啓発の施設で、性的マイノリティの方の人権について講演会を開催したことがあったんですが、あるご年配の参加者から、「LGBTQ+には反対です」という感想が届いたんです。他者のセクシュアリティは「反対」するような対象ではないわけで、私としては残念に感じたのですが、活動をしていく中でこういう経験はたびたびあるんですよね。 和田さん:えー! そんなことがあったんですね。 村上さん:そのときは、「思考が固まってしまった人の意識を変えるのは難しいのかな」と一瞬絶望しかけますが、ほかの人にとっては、性的マイノリティについての理解を深めるきっかけになったかもしれない。これは、ポジティブシンキングすぎるかもしれませんが、諦めそうになったときは、啓発の見えない可能性を考えるようにしています。 和田さん:なるほど…。それは書面で届いた感想で直接お話することはできなかったと思うのですが、例えば目の前に相手がいる場合、もし相手の発言に傷ついたり違和感を感じたのであれば、私は我慢して飲み込まず、正直に気持ちを伝えるようにしているかも。とはいえ、意見を言うことが権力関係を作ってしまっていないか、ということには自覚的でいたいと思っているのですが。 それから言葉選びにも気をつけているかもしれません。大学院時代は、「自分が発信する言葉をつねに疑え」と教授から言われていたので、「今発しようとしている言葉は適切か」を意識しながら伝えるようにしているかなあ。 村上さん:わかります。私も違和感を感じたときは、できるだけ言葉を選んで、丁寧に気持ちを説明ことは心がけていると思う。例えば以前、フェミニズムにとても関心が高い方が、“結婚する側のあちら側”と“結婚しない側の私たち”という対立構造を作って、結婚を選択する人を非難するような表現をしていたことがあり、それに少し違和感を抱いたんですね。 でも、やっぱり現在の日本の状況だと、結婚することで金銭的にもメリットがあるし、生存戦略として結婚せざるを得ない人もいる。もちろん、結婚したいという夢を抱いている人もいる。だからそのときは、「“日本の婚姻制度の問題”と“その人が結婚を選ぶこと”は別物だと思う」という自分の意見を伝えて一緒に考えましたね。