【和田彩花×村上由鶴】きっかけはアイドル時代の違和感。アートとフェミニズムを考える【国際女性デー特集】
大人になりたいのに、子どもっぽいままでいることを望まれる。そんなときフェミニズムアートに出合った(和田さん)
――アートの他に、お二人のもうひとつの共通点といえば、「フェミニズム」です。村上さんは主に写真や現代アートを通して、和田さんはアイドルや音楽活動を通してフェミニズムについて発信していらっしゃいます。お二人が、そもそもフェミニズムに興味を持ち、今の発信をするようになるまでには、どのような経緯があったのでしょうか。 村上さん:私の場合、ミランダ・ジュライやレナ・ダナム、エマ・ワトソンなど、海外セレブたちが女性の人生について語る姿に、大きな影響を受けたと思います。また大学生の頃、当時13歳で雑誌「Rookie」を立ち上げたダヴィ・ゲヴィンソン(Instagram/@tavitulle)がとても注目されていて、彼女がフェミニズムについて発信していたのを見て、フェミニズムはおしゃれなものなのだと感じていました。 そこから自分でも調べるようになりましたが、アートとフェミニズムのつながりについて考え始めるようになったのは、大学院に入ってからです。その時期、国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』で開催された企画展『表現の不自由展・その後』に対して抗議や脅迫があってわずか3日で中止になったことをはじめ、「アートに対する思い込みによって、社会にきちんと受け入れられていない」と感じる出来事が多くありました。 先ほど、和田さんが「美しくないアートもあることを発見した」とおっしゃっていましたが、まだまだ世間では、“美しくなければアートではない”、“理解できない人は相手にしていない”という認識が根強くある気がしています。同じように、フェミニズムも、“怒っている女性たちの負け惜しみ”、“フェミニストは感情的で怖い”といった印象がつきまとっている。 実際、どちらも難解で、権威主義的かつ排他的に見えてしまうという問題は抱えていると思います。アートとフェミニズムのフィールドを行き来しながらこの問題について考察し、発信することで、どちらに対しても、社会からの理解を深められるのではないかと思ったことが、著書のテーマにつながっています。 和田さん:村上さんが発信されているアートとフェミニズムの関係性、とても面白いと感じました。私もフェミニズムに興味を持ったのは18~19歳、大学生の頃です。当時は、アイドル活動をしながら大学に通っていたのですが、私が身を置いていたアイドル業界は、“アイドルらしさ”や“女らしさ”が強く期待される社会。それにとても違和感があって、反発もしていた。 同時にその頃、自分のアイデンティティやセクシュアリティについても迷いがあり、つねにモヤモヤした感情を抱えていたのを覚えています。 そんな中、大学でフェミニズムの文脈でアートについて学ぶことで、アイドル活動で感じる違和感とつながっていることに気づいたんですよね。そこからは、図書館でフェミニズムの本を読み漁る日々が続きました。 村上さん:そのときに出合ったフェミニズムアートで印象的なものはありますか? 和田さん:現代美術作家・やなぎみわさんの写真作品「フェアリーテール」シリーズかなあ。“老い”と“若さ”をテーマにした作品で、はじめて見たときは「怖い」という感覚に陥りましたが、同時に、自分の中にある偏見や固定観念に気づいたんです。 というのも、私はアイドル業界にいたときに、ずっと幼いままでいることを期待されていて、それがすごく嫌だったんです。自立した大人になりたいのに、いつまでも子どもっぽいままでいることを望まれる。 その状況に心苦しさを感じていたときにこの作品に出会い、若さが女性の価値のすべてではないことや、老いも含めた人生の多様性を感じることができました。 村上さん:その“若さ”や“幼さ”を求められると感じたのはどんなときだったんでしょうか。 和田さん:例えば、「前髪を切りなさい」と言われたとき。やっぱり前髪があると、可愛らしい印象になるので、18~19歳の、子どもと大人の境目くらいの時期にすごく言われた記憶があります。とはいえ私は反抗していましたし、自分がやりたいようにやっていましたね。もともと私は自分の意見がかなりあるタイプで。 だから、とにかくこの時期は、まわりから押し付けられる“こうあるべき”に対してすごく憤りを感じていて、ラジオや自分のブログで、その想いについて度々話していました。 でも、ひとつよかったことは、まわりにいたメンバーが、わりと私と同じようなマインドの持ち主で、同じように憤っていたこと。そして、周囲に言われたスタイルに従うのではなく、自分が着たい服、したい髪型やメイクを貫いて、お互いに“いいね”と言い合いまくっていた。大人たちに自分が守りたいことを侵害されずに活動できていたことは、本当によかったなと思います。そのときの経験が、アイドルと人権について発信する今の活動につながっています。 村上さん:そんな仲間がそばにいるって心強いし、すごく素敵なことですよね。 和田さん:ジェンダー関係なく、同じマインドの人はやっぱりつながれると思うんです。自分が違和感を感じたことを共有していくことで、まわりの人と支え合えると思うから。