アブダビに2025年、巨大没入型施設「スフィア」が誕生! 観光客爆増の起爆剤となるか
23億ドル(約3444億円)の建設コストを投じて、ラスベガスに建設された世界最大規模の複合型アリーナ「スフィア」が、アラブ首長国連邦のアブダビに新たに建てられることが発表された。 運営母体の一つであるSphere Entertainment Co.でCEOを務めるジェームズ・L・ドーランによれば、そもそもスフィアは2023年9月に行われたロックバンドU2のこけら落とし公演を皮切りに世界展開する計画であったといい、「ライブエンターテインメントを再定義し、新たな没入型体験施設をアブダビ市とともに開発できることを誇りに思います」と声明を発表している。また、同国の文化・観光大臣を務めるモハメド・ハリーファ・アル・ムバラクは、この取り組みは、アブダビ市が掲げる観光客確保とインバウンド消費の拡大を狙った政策の一環であると語り、こう続ける。 「スフィアをアブダビに建設することで、市内の住人や観光客の方々に革新的なエンターテイメントを提供できることをとてもうれしく思っています。スフィアは、最先端の技術と魅力的な物語をシームレスに統合し、訪れるすべての人に忘れられない思い出を提供してくれることでしょう」 2万人の収容人数を誇るラスベガス・スフィアの外観には、約5万4000平方メートルの2Kのディスプレイが搭載されており、会場内には16Kの解像度を誇るLEDディスプレイと16万7000個のスピーカーが設置されている。《Machine Hallucinations》と題されたAIアート作品を同施設で公開したレフィク・アナドルは、スフィアは「メディアのカンバスになるために建てられた施設」と評している。 「スフィアで作品を公開できたことをとても光栄に思います。これまでは、彫刻作品のような建築物を作り上げるフランク・ゲーリーに大きな影響を受けていましたが、メディアそのものを建物として表現できるスフィアからは、別次元のインスピレーションを得られました」 昨年9月のオープン以来、不動産デベロッパーのMadison Squaregarden Entertainmentはスフィアを世界展開するべく画策しており、ロンドンを候補地の一つに挙げていたが、同市長のサディク・カーンは2023年11月に申請を却下している。一方、ドバイから富裕層が流入しているアブダビは、2030年までに観光客3090万人を目指している(現在の観光客数は約1600万人。ちなみに2023年の日本の観光客数は約2500万人)。ペルシャ湾を望むこの地で巨大球状アリーナを用いたどんな実験が繰り広げられるのか、今後の動向に目が離せない。
ARTnews JAPAN