「墜落したような感じだった」、緊急着陸のシンガポール機の乗客語る
(ブルームバーグ): その時、トビー・パールさん(21)はロンドン発シンガポール行きの機内でエコノミークラス43列目の座席にいた。次の瞬間、機内は地獄絵図と化した。私物や食べ物、そして乗客までもが機内を飛び交い、頭上の荷物入れに激突したり、天井から酸素マスクが下りてきたりする大混乱が起きた。
シンガポール航空が運航していたボーイング777は、乱気流に巻き込まれ、1人が死亡、多くの人が重傷を負った。パールさんは、自身もすぐに応急処置に駆けつけたが、心臓発作の疑いで死亡した73歳の英国人を助けることはできなかったと語った。
パールさんは同機がバンコクに緊急着陸した後、書面による質問に対し、「シートベルト着用ランプが点灯し、乱気流に巻き込まれた直後、自分自身、そして他の多くの人が宙に放り出され、天井にぶつかった。墜落したように感じ、航空機が落ちていくと思った」と答えた。
シンガポール到着予定時刻まであと2時間程となり、高度3万7000フィート(約1万1200メートル)で飛行していた同機は突然、パールさんが「大きな衝撃」と表現するような強い揺れに襲われ、誰もが不意を突かれた状態だった。その後、より小規模な「もっと対応しやすい」衝撃があったという。
航空機の位置情報を提供するフライトレーダー24のデータによれば、同機は速やかにバンコクへの緊急着陸に航路変更を始めた。救急隊員によると、7人が重体で、病院に搬送された。パールさんを含む他の乗客は健康診断を受け、無料ハンバーガーの提供を受けた後、それぞれの旅を続けることが可能となった。
高高度乱気流は珍しい現象ではないが、死亡事故につながることはまれだ。航空会社は乗客に、シートベルトを常に締めておくように勧めているが、長時間の移動を快適に過ごすために、パイロットが着用ランプを切ると多くの人がベルトを外す。
飛行安全財団のハッサン・シャヒディ最高経営責任者(CEO)は「乱気流による負傷の75%余りは高度3万フィート強の高高度で起きており、この高さでは予測不可能な乱気流が発生する。航空機はこうした衝撃に耐えられるように設計されているが、シートベルトを着用していない乗客は守れない」と指摘する。