なぜ井上尚弥は12.14両国で無名のタイ人を挑戦者に選んだのか…ベルト統一を狙うモンスターゆえの葛藤
その中でタイの不気味な“KOマシン”が世紀のアップセットを狙ってオファーを受けたことに大橋会長は「この選手だけが受けてくれた。感謝している」と敬意を表した。だが「好戦的で11KOの成績通りにパンチは強い。油断はできない。一発で何がおきるかわからない。スリリングな試合になることは間違いない」と続けた。井上にとって役不足の相手ではあるが、守りに入らず、いちかばちかの一発を狙ってくるタイ人の”万が一”を警戒しなければならない。 さらにビッグファイトが流れたことで井上のモチベーションへの懸念もある。それでも井上は、「来年の春に(統一戦が)あるということなので、それに向けてのモチベーションと、2年ぶりの日本というモチベーションもある」と気を引き締めた。 真の王者のメンタルを試される試合でもある。 ここからは、大橋会長いわく「ディパエンにちょっと似ている」という20歳のホープ、石井渡士也(REBOOT・IBA)らをスパーリングパートナーに招き、万全の準備に入る。 父で専属トレーナーの井上真吾氏も「スパーリングで、いいところを伸ばして悪いところを修正していく。自分のペースにもっていって、打たさず、しっかりとダメージを与えてフィニッシュにもっていければいい」との青写真を描いた。 来春のビッグマッチへ向けて絶対に負けられないというプレッシャーも、2年ぶりの国内リングで、いいところを見せたいという力みも出るだろう。この戦いの本当の敵は、井上自身の内側にあるのかもしれない…。ファンの期待は「秒殺KO」。容赦なく無名のタイ人をぶっ壊す“キラー尚弥”が見てみたい。