現代の「デジタル社会」で、なくしては成り立たない「コンデンサー」のしくみ
物理に挫折したあなたに――。 読み物形式で、納得!感動!興奮!あきらめるのはまだ早い。 【写真】「とても簡単な部品」になぜ電気が蓄えられるのか? 大好評につき5刷となった『学び直し高校物理』では、高校物理の教科書に登場するお馴染みのテーマを題材に、物理法則が導き出された「理由」を考えていきます。 本記事では、〈「とても簡単な部品」になぜ電気が蓄えられるのか?…電気回路に不可欠の電子部品 「コンデンサー」の謎を解く!〉にひきつづき、コンデンサーについてくわしくみていきます。 ※本記事は田口善弘『学び直し高校物理 挫折者のための超入門』から抜粋・編集したものです。
「電荷」「電場」「電位」、実は三位一体の存在
さて、ここで、再び「電荷」に登場していただこう。 クーロンの法則でも説明したとおり、電荷(Q)とは、帯電したものが持っている電気のことで、陽子に比べて電子が多いと-に帯電し、電子が少ないと+に帯電する。電荷の量のことを「電荷量」あるいは「電気量」という。ちなみに公式は以下のようになる。 電荷(Q)=電気容量(C)×電圧(V) ここで、「電場」という、ややこしい概念にも再登場していただく。「場」とは、目には見えないが、その中に置かれる物体に力を与える空間のことをいう。前述したように、電場とは、ひらたくいえば、電荷が電気的な力を受ける空間のことを指す。「電場」は「電界」と呼ぶこともある。 電場の強さ(E)は、空間の1点に電荷を置き(点電荷という)、この電荷が受ける力(電気力)で表す。 実は電圧(V)は、この電場の強さ(E)に逆らって、点電荷を動かす仕事量として表すことができる。式にすると、 電圧(V)=電場の強さ(E)×電荷を動かす距離(d) となるので、電場は、次の式で表すことができる。 平行板コンデンサーの間の電場は、電圧を極板間距離で割ったものとする式は、高校物理の教科書に書かれているが、これがその説明である。
倒錯する物理量の定義
この式はコンデンサーの専売特許ではないので、電気抵抗に電流が流れる場合でも成り立つ。 電場=電圧/電気抵抗の長さ ここで、やっかいな問題が生じる。電気抵抗がない導線の部分に電場があると、上記の式からも明らかなとおり、そこには距離に応じて電圧があることになってしまう。しかし、電圧があり、電流が流れているのに電気抵抗はゼロ、となるとオームの法則(電圧=電流×電気抵抗)と矛盾してしまう。 そこで物理学者たちは、「電気抵抗以外には電場はない」と考え、「電場は電気抵抗があるところだけにしかない」ことにした。 なんだか屁理屈臭いが、こうでもしないといろいろ矛盾が起きてしまう。電場があったら電荷に力が働いてしまうので、導線のところに電場があることになると電荷に力が働いて加速してしまう。そうなると電流が増えてしまうことになるので、一定の電流が流れているという現実と矛盾してしまうからだ。 このなんとも倒錯した感じの定義(導線の中で電場があることにすると現実と矛盾するから、電場がないことにしよう!)はいまでは一周回って逆に導線の定義になってしまっている。つまり「電場が絶対生じない物質を導線と呼ぶ」ということである。 こういう最初は導出された結果(電気抵抗がない導線の中に電場があることにするとオームの法則と矛盾するからないことにしよう)だったものが逆に定義になってしまう(内部に電場が生じないものを導線と定義)のは物理学ではよくあることである。 「エネルギー保存則」だって最初は実験に基づく結果にすぎなかったが、今は、保存するというのはむしろエネルギーの定義のひとつになった。 このように実験から積み重ねた結果を確かなものとしてむしろ定義に置き換えていくというのは物理学においては重要なプロセスである。 ちなみに現実の回路の場合、導線部分であっても電気抵抗はゼロということはなく非常に小さな電気抵抗があって、そこでの電位の変化は無視できるので「電気抵抗はゼロとする」とされているだけである。本当に電気抵抗がゼロの物質は超伝導体しか存在せず、常温常圧で超伝導になる物質は見つかっていない。