「ニットといえばベージュ」だったフェミニン派エディター三尋木奈保さん。50代を迎え、今年「グレー」を選んだ理由とは?
理想の洒落感をかなえるのは、ほのかに香る”メンズっぽさ”
「このニットは、『オブリオ』で一目惚れしたもの。 首元は広めのクルーネック。リラクシーなゆったりとしたサイズ感が、カジュアルなムードを呼び込んでくれます。シンプルですが、肩先にマチが入っていて、ショルダーラインが直線的に見えるのもさりげないデザインポイントに。 ミドルゲージで、杢調がしっかりとたった編み目で、リブも太め。無骨なのに、気品や落ち着きも感じられてーー。聞けば、素材がとっても上質なのです。 ディレクターの木本さんご自身にお話によると、こちらはイタリアの老舗糸メーカー・ビアジョリ社のウールを100%使用しているのだそう。カシミヤと同じ手法で紡績しているため、ウールなのに驚くほどソフトタッチ。しなやかな風合いに仕上がっています。かのヨーロッパのメゾンブランドのシェットランドニットもじつは同じ糸を使っているということも、聞いて納得です。 これまでは、「冬のニットはカシミアでなければって」って思いが強かったのですが、ハイクオリティなウールはちょっと違うんです。カシミア同等の着心地の良さがありながら、ウールならではのメンズっぽさがある。そしてそれこそが、わたしがいま欲しい洒落感なのではないか、とそんなことに気づかせてくれました。 柔和さや優美さとは逆のベクトルの、少し男前な雰囲気を味方にすることで、まろやかに傾きすぎず、女性像も少し辛口に。ニットスタイルがぐっと新鮮になりました」
「50代前半のいま、これまで大好きだったフェミニンコンサバから抜け出したいという欲が出てきているんです。着こなしや雰囲気が“ずーっと同じ”って、どうなのかなって思って。 外見も内面も、体の機能も変わって、確実に自分自身は変わってきています。もちろん、それは自然なこと。だからこそ髪型やおしゃれも“今の自分”とバランスが取れるように更新すべき。そして、それを楽しんでいきたいなって思うんです。 ゴールドとダイヤモンドのリングを左右に散らして。年齢にふさわしいエレガンスは大好きなジュエリーに託します。ゴールドのバングルと合わせたお気に入りのアンティークの時計も、少しカジュアルなこのニットスタイリングにすんなりと溶け込んで、新しいつけこなしの楽しみを見つけました。 冬本番、毎日の相棒のように過ごすニットは、妥協せず、気に入ったものを選びたいです。 そして、自分に似合う匙加減で”辛さ”や”かっこよさ”を取り入れながら、いまのわたしを物語るニットスタイルを作っていきたい、そんなふうに思っています」 撮影/渡辺謙太郎 ヘア&メイク/小澤実和 取材・構成/松井陽子