斜陽産業を再生へ スキー場を甦らせた経営戦略とは
他にもファミリーを呼びたいスキー場には遊具を増やすなど、それぞれのスキー場のカラーを1つずつ付けていった。「1つしか経営していなかったら、どうしても全部欲しくなる。ターゲットを絞ることができないんです。若者もファミリーも来てね、深夜も来てねって全部やっちゃう。ブレるんですよ。ボヤけちゃう。全方位外交やって、全部が中途半端なものを作っちゃうんですよ。ターゲティングができないと当然マーケの組み立てもできないんです」。数多く経営することのメリットが、ここにも生きている。 また各スキー場を個性づけるためには、それぞれの特性を熟知しなければならない。一ノ本氏は毎年必ず27か所全てのスキー場に自ら足を運び、全リフトに乗って全コースを滑る。「もう1周目は終わって、今、2周目ですよ」。非常にタフな男だ。 ■再投資の重要性 大幅なコストカットなど支出を抑える一方で、再投資の重要性も訴える。ブームを振り返り、「マーケティングの苦労なくスキー場が繁盛しちゃったから、マーケティング手法が身に付かなかった。売り上げが立つとどの商売でもコストが高くなっちゃうんですよ。利益が出て色んなものが買えちゃうから。人も雇えちゃうし」。と話す一ノ本氏。しかしブームが去り、売り上げが落ちても「高コスト体質」から脱却できず、赤字に転じた。投資どころではなくなった。 もう一度リセットして適正化していくことで、しっかりとした収益を生み、再投資ができる。リフトを架け替えたり、リフトの場所を変えて新コースを造ったり、そういうことに再投資をしていく必要があるという。 「従来のスキー場はもう約20年、同じ景色をお客様に見せ続けている。ボクは『20年同じ映画を見せている』って言うんですけど。20年同じ映画を上映していたら、その映画館には誰も来なくなりますよね。そういう状況を普通にやっちゃってるんです、スキー場は」。 順調に投資がなされていたブームの頃は、毎年スキー場には変化があった。「ブームが去ったのもあるけど、魅力を出し続けられなかったスキー場側の責任てデカいと思うんですよ。テーマパークのアトラクションだって新しいのが出ればねぇ。スパイダーマンできたし行ってみるか、ってなりますよね。やっぱりワクワク感出るじゃないですか」。今こそ再投資することで、新たな客を呼び込めると自信を見せる。