斜陽産業を再生へ スキー場を甦らせた経営戦略とは
かつて空前のスキーブームの頃は、客側が情報を求めてやって来た。「スキー場側は未だに、まさか自分らのスキー場が知られてないなんて誰も思ってないんですよ。でもお客様って3年から7年くらいで入れ替わっちゃうんで、7年宣伝広告を打たなければ“誰も知らないところ”になるんです。それに気付いてないんですよ、スキー場側は」。 だから今は「いかに知って頂くかというところに腐心をして、自分のスキー場に来て頂けるマーケットはどこだっていうのを明確に定めて、そこに集中的にマーケティングをかけています」。自ら仕掛けていく必要があるのだ。 そのためにはテレビもどんどん利用する。「月並みなんですけど、やはりテレビが一番強制力があるので、ウチは相当テレビに出ています。それしかないです、知らない人に知ってもらう方法って」。 また一ノ本氏が日々マメに更新するブログも人気を博し、宣伝の一助を担っている。そして知ってもらった上で、斬新な企画を打ち出す。「19歳、無料」は大ヒットだった。「19歳って初めて自分で判断をして、スキー場に行く行かないを決める。社会人1年目だったり大学1年生だったりするじゃないですか。19歳で山に来なかったら、かなりの確率で一生、山に来ないんですって。じゃ、そこ無料にしようよ。無料にして来てもらって、クセをつけてまた来てもらうようにしようよっていうところですよね」。まんまと“クセ”がついた19歳は、翌年以降も通って来ているそうだ。もちろん料金を払って。 「今あるリソースを使って最大限マーケットを作る」ということも企画の一つだ。一部のスキー場では夜11時までナイター営業している。「人口のいるところから近い位置にあるスキー場はこの手法が当たりますね。あとアクセスがいいということ。山奥ではやっちゃダメなんです。誰も来ないし、帰り遭難しますからね(笑)」。それと「既にナイター施設のあったところ」だ。「そのまま延長するだけですから。新しい設備投資は要らないけど、売り上げが伸びる」。 「忙しい」「夜しか空いていない」。そんな人達を掘り起こしたナイター営業は、大きなマーケットを生んだ。