【ピエール・エルメ】リカちゃん、浮世絵…日本の魅力を再発見
2020年春、新型コロナウィルス感染症の蔓延防止のための緊急事態宣言が出された。多くの飲食店が休業や営業時間の短縮など厳しい局面に立たされた。 その宣言から24時間後、ルデュは業務用服を扱う量販店で作業服を探していた。48時間後には、自身のつながりから協力を得て、シトロエンやプジョーの車にピエール・エルメ・パリのお菓子を積んで、ホームデリバリーをスタートさせた。 配達スタッフはもちろんピエール・エルメ・パリのスタッフだ。 「日本のピエール・エルメ・パリには400人の従業員がいるんです。私には彼らの生活を守る責任があります。なんとかしなくてはと思い、必死で取り組みました」 【写真】コロナ禍、期間限定で行われた「おうちエルメ」の手書きのメッセージを添えたデリバリーボックス
急遽用意した真っ白なボックスにスタッフが手書きのメッセージを添えて、注文してくれた客に感謝の気持ちを伝えた。社長であるルデュも自ら宅配先に赴き、お客様にお菓子を届けた。 「注文してくださるお客様に対してそれまで以上にありがたい気持ちになりました」とルデュ。一方、自粛生活で不安が募る中、メッセージとともに届けられた華やかで美味しいお菓子に、元気をもらったという声もSNSを賑わした。 「これまでは、お客様がお店に来てくれるのを待っていたけれど、自らお客様に会いに行くという体験はとても新鮮でした。お客様の顔やたたずまいがそれまで以上に見えてきて勉強にもなりました」 「出会いは大切」とルデュは言う。ピエール・エルメ・パリの立ち上げとともに来日し、、四半世紀の歩みの中で様々な出会いがあった。国内の農家や工芸家との出会いも刺激になった。 「日本はそれぞれローカルの風土も文化も多彩で魅力的。30年近く住んでいますが飽きることがありません。本当におもしろいです」とルディは目を輝かせる。 「フランスのパティスリーとしてお菓子の食材は輸入に頼ってきたのですが、日本各地にこれほどにも多彩で豊かな食材があることを知るにつれ、私たちも発信していくべきだと思ったんです」 そこから生まれたのが、国内の生産者が手塩にかけて作ったものを生かすブランド「Made inピエール・エルメ」だ。