MotoGPマシンに急接近!その差は約4秒!【2025ドゥカティ パニガーレV4S 海外試乗インプレ】
きちんと止まれるから、大胆な加速ができる
パニガーレV4Sのハンドリングはとてもフレキシブル。旋回中のライン変更もしやすい。少しつっこみすぎた時などもリカバリーしやすく、これは思い切って横剛性を落としたフロントフレームと両持ちスイングアームの効果だろう。 しかし、僕にとってのパニガーレV4S最大のハイライトは、5速/270km/hからフルブレーキングして2速までシフトダウンするバックストレートでのワンシーンだった。走るほどにブレーキは深くなり、止まれないかも…、と緊張することもあったがパニガーレV4Sは減速を完璧にこなし、さらには向きを変えやすい姿勢に導き、スロットルを開ける体制までもを提供してくれた。「きちんと止まれるから、きちんと開けられる」の繰り返しで、その精度を高めていくチャレンジはとてもエキサイティングだった。 レースeCBSは、フロントブレーキを離しても必要であればリヤブレーキを調整し続けるため、ブレーキペダルから足が離れがちな左カーブや、深いバンク中、イン側の足を出してのコーナリングにも効果を発揮。この機構をもっと理解できれば、走りをまだまだ進化させられるかもしれない…体力のない50歳の僕にもそんな明るい希望を持たせてくれるのがレースeCBSなのだ。 もちろん立ち上がりでは、怒涛のパワーが炸裂…。確かに炸裂するのだが、暴れ馬のような感覚はなく、パニガーレV4Sは狙いを定めた場所に瞬間移動するような印象だ。これはガチガチのフレームでどこに飛んでいってしまうかわからなかった初期型のパニガーレV4Sからは考えられない振る舞いである。
スーパースポーツに対する確固たる自信、その背景にあるあくなき探究心
スーパースポーツ開発の最大の難関は、厳しい規制に対応させること。そしてエンジン開発に莫大なコストがかかることだろう。その中でもBMWとドゥカティは常に研究開発を続けている。 「ライバルはBMW?」と聞くと「そう、もちろん。あとCBR1000RR-R」と返ってきた。「他の日本勢は?」と聞くと「他のバイクは開発を止めてしまっているじゃないか」との返答。さらに各モデルのキャラクターの特徴を細かく教えてくれた。当たり前だが、物凄くシビアに研究をしている。 確かにドゥカティは開発を絶えず続けている。しかもMotoGPマシンを開発するドゥカティのレース部門である、ドゥカティコルセが直接開発を手がけているのだ。MotoGPテストライダーのミケーレ・ピッロは、今回のパニガーレを「とても自信がある」とコメント。ダニロ・ペトルッチは「エキサイティングだ」と語っている。 「我々ほど多くのサーキット、多くのライダーを乗せてスーパースポーツを開発しているメーカーはない。そこは絶対に他のメーカーに負けない自信がある」とドゥカティのエンジニアは自信満々に語る。聞くと、すでに欧州のMotoGP開催コースをいくつも走り込んでいた。このR&DスタイルであればMotoGPマシンとの比較もしやすいだろう。 「WONDER. ENGINEERED.」のキャッチコピーとともに登場したスーパーバイクの第7世代である2025年モデルのパニガーレV4Sの興奮と驚き、その余韻を僕は帰国後も楽しんでいる。この驚きに包まれる嬉しさを、多くのライダーにも体験してもらいたい。
ドゥカティ パニガーレV4S [2025]主要諸元
・ホイールベース:1485mm ・車重(燃料含まず):187kg ・エンジン:水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ1103cc ・最高出力:216PS/13500rpm ・最大トルク:120.9Nm/11250rpm ・燃料タンク容量:17L ・変速機:6速リターン ・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク ・タイヤ:F=120/70 ZR17、R=200/60 ZR17 ・価格:414万1000円
小川 勤