湯船で交わしてきたいくつもの会話 “驚かなかった”キャプテン継承…誰もが認める“資質”【コラム】
永井SDと山口の間で交わされていた会話「シーズン中からずっと話をしていました」
スタンドを大きくどよめかせた突然の新キャプテン指名にも、山川は表情をほとんど変えなかった。 「僕もあの場で初めて聞きましたけど、そんなにめちゃくちゃ驚いた、というのはなかったです。蛍さんが自分を信頼して言ってくださって、蛍さんの気持ちは真摯に受け止めました。シーズンが終わったばかりですけど、身が引き締まる思いになったというか、来シーズンに向けてしっかりやっていかないといけない、と」 夏場から幾度となくかわしてきた会話のなかで、山口の言葉がキャプテンのバトンタッチへ向けた伏線だと、山川の中で予感のようなものがあった。そして山口もまた、今シーズンのリーグ戦で累積警告による出場停止1試合を除く37試合ですべて先発し、そのうち32試合でフル出場、フィールドプレーヤーでは最長となる3267分をプレーした山川は10月に27歳となり、大役を託す時期が来たと判断したのだろう。 永井秀樹スポーツダイレクターは「シーズン中からずっと(山口と)そんな話をしていました」と明かす。山川本人を含めた他の選手たちには伏せていたものの、フロントにはしっかりと意志を伝えていた。オフに入った関係で神戸側から発表はないが、来シーズンの始動とともに正式に新キャプテンが誕生するだろう。 兵庫県尼崎市で生まれ育った山川は、中学生の頃から神戸の下部組織に所属。ヴィッセル神戸U-18の最終学年だった2015シーズンにトップチーム昇格のオファーを受けながら、プロで生きていく自信がまだないと断りを入れている。進学した筑波大での4年間で自信を大きく膨らませ、再びオファーを出してくれた神戸へ、満を持して加入し、今シーズンで5年を終えた。 当初は右サイドバックでの起用が多かったが、昨シーズンは本職のセンターバックとしてJ1初優勝に貢献。今シーズンからは神戸の最終ラインを長く支えたレジェンド、北本久仁衛(現コーチ)や元ベルギー代表DFトーマス・フェルマーレンが背負った「4番」を託される存在となった。 一度、トップチーム昇格を断ったのは、中途半端な実力でプロになっても、愛してやまない神戸のためにならないと考えたからなのだろう。自分のなかで脈打つ神戸への思いを、山川はこう語ったことがある。