G20、首脳宣言でウクライナ・中東情勢への懸念表明…ロシア名指しは避ける
【リオデジャネイロ=淵上隆悠、大月美佳】主要20か国・地域(G20)首脳会議は18日、ブラジルのリオデジャネイロで開幕し、成果文書となる首脳宣言を採択した。宣言は、19日でロシアによる侵略開始から1000日目となるウクライナ情勢について「人的被害や、食料、エネルギー安全保障などに関する悪影響を強調する」と表明したが、G20に加盟するロシアの名指しは避けた。
宣言は、世界各地で進行中の紛争や戦争について、「全ての国は領土獲得のための武力行使を控えなければならない」と明記した。その上で、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザや、レバノン情勢を巡っては、人道状況の悪化に「深い懸念」を表明。人道支援の拡大を求め、「包括的な停戦」を呼びかけた。イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」を支持する姿勢も示した。
米国のバイデン大統領は18日の会議で、「米国は『ウクライナの主権と領土の一体性』を強く支持する」と述べ、各国に賛同を求めた。ガザについては、早期の停戦合意に向けて働きかけを続ける考えを示した。
宣言を巡っては、関税の引き上げなど保護主義的な政策を唱えるトランプ次期米大統領の返り咲きをにらみ、国際貿易への言及も注目された。宣言は、世界貿易機関(WTO)を中核とする「多角的貿易体制を確保する必要性」に言及したが、保護主義への反対は明記しなかった。
また、急速に進化する人工知能(AI)について、「安全、安心で信頼できる開発、導入の確保」の必要性を強調した。「知的財産やプライバシーの尊重」も必要とした。偽情報の拡散などに触れた上で、AIのリスクを軽減するため、「国際的なガバナンス(統治)に関する協力や議論を促進する」と盛り込んだ。
温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」については、「目標を再確認し、引き続き結束して努力する」と表明した。米国はトランプ次期政権の発足後に離脱する可能性が指摘されている。
首脳会議は石破首相やバイデン氏らが出席。19日に2日目の議論を行い、閉幕する。