タレント写真集、フォトエッセイが好調 デジタルデータにはない存在感
今年に入ってから、ジャニーズ事務所が所属タレントの写真のWeb解禁を徐々に進めつつあることが大きな話題になった。ついにジャニーズも重い腰を上げざるを得ないほど、ネットの拡散力や便利さはすっかり定着し、無視できない時代になったということだろう。スマホで検索をかければ、誰もが好きなタレントの写真を手軽に見ることができたり、保存することも可能になってきた。そんな中で、昔ながらの紙の写真集が売れ行き好調だという。 乃木坂46の白石麻衣の写真集『パスポート』(講談社)は、発売から1年が過ぎ16度目の重版、累計発行部数28万部突破と大ヒット。つい最近も、純粋な写真集というよりフォトエッセイではあるが、石田ゆり子の『Lily――日々のカケラ――』( 文藝春秋 )が10万部を突破したことが驚きを持って報じられたばかりだ。そこまでのヒットではないものの、2月22日に発売された最上もがの2nd写真集『MOGAMI』(集英社)も今月に入って重版がかかったという。
昨今、エンタメ産業全体で参加型・体験型サービスが伸びているといわれる。アイドルなども、従来はテレビ番組などで遠くから応援して楽しむことが多かったが、近年は握手会やライブなど実際に参加できるイベントが全盛だ。物として手にすることができ、自分の部屋に保管できる写真集も、ある意味ではそういった動向とリンクしていそうだ。デジタルデータでは味わえない所有感など、確かな感触を求める人が多いのだろう。 そして「写真を所有したい」という願望は、タレントの写真集のみならず、写真文化全体にとっても好ましいものではないだろうか。
美術作品としての写真はオリジナルプリントで
少し話はそれるが、ここで写真自体について考えてみたい。 19世紀に始まったといわれる写真だが、ネガなどの原版から複製できるため、美術的価値は高くなかった。そんな中、美術品としての価値も認められるきっかけとなったのがオリジナルプリントという考え方だ。ネガから写真を作る際、さまざまな解釈ができる。一例をあげると、同じ原版でもコントラストを強めに硬く仕上げた場合と、コントラストを低めに軟調に仕上げた場合とでは印象の異なる作品になる。いくらでもプリントによってニュアンスを変えることができるのだ。したがってオリジナルプリントとは写真家自身か、写真家が認めた技術者によるプリントでなければならない。写真家自身が納得した解釈、クォリティーの写真であることが条件になる。 しかしながら、オリジナルプリントを見ようとすれば、写真展(必ずしもオリジナルとは限らないが少なくともプリントではある)がまず思い浮かぶが、開催期間や開催場所、そもそも観たい写真展が開催されるかどうかという問題もある。 購入すれば、プリントを見ることができると同時に自身のコレクションとして所有欲を満たすこともできるわけだが、欲しい写真のオリジナルプリントが売られているかどうかはわからない。