タレント写真集、フォトエッセイが好調 デジタルデータにはない存在感
こだわりの写真家のつくる写真集はすごい
そこで、プリントのようなステータスや所有感はないかもしれないが、もっとも手軽に誰もが写真を所有する方法として、写真集はひとつの理想的な形といえる。写真集も印刷などによってクォリティーはピンキリだし、どこまで写真家が関わるかはわからない。こだわる写真家は紙質も含め印刷段階まで携わるが、タレント写真集の場合は美術である前にまず商品であり、そこにはコストの問題もあるから、そういったケースはほとんどないだろう。それにしても、デジタルデータのように再生するモニターによって著しく色調が変わったりする心配はないし、何より物としての所有感がある。 1990年代に、満月の光だけで撮影された『月光浴』(写真家・石川賢治、小学館)という写真集が大ヒットした。翌年には、ヘアヌードブームにタイミングを合わせた宮沢りえの写真集『Santa Fe(サンタフェ)』(写真家・篠山紀信、朝日出版社)が芸能人を被写体とした写真集としては空前のヒットを記録した(2003年6月までの集計で165万部といわれる)。 まだインターネットも普及せず写真集が元気だった時代の話だが、これだけ手軽にデジタルデータとしての写真を閲覧・入手できるようになった現在でもなお、タレント写真集が根強い人気を持っているという現象は、写真というジャンルにとって心強いことではないだろうか。 (文・写真:志和浩司)