隆の勝が意地の“銀星”で10勝目「あまり人生で優勝を経験していない」初優勝へ前進
<大相撲九州場所>◇11日目◇20日◇福岡国際センター 中卒たたき上げが意地の“銀星”を挙げた。東前頭6枚目の隆の勝(30=常盤山)が、新大関大の里を終始攻め続けて押し出した。10勝1敗とし、琴桜、豊昇龍の両大関と並んでトップを守った。隆の勝は中学時代は無名。卒業後に進んだプロでも各段優勝は1度もなかった。それが日体大でアマチュア横綱など個人13冠、プロでも史上最速優勝など順風満帆の大の里を撃破。初優勝へと近づいた。 ◇ ◇ ◇ 止まらない勢いは、今場所の主役ものみ込んだ。隆の勝は立ち合いで、わずかに左へ体をずらし、大の里の圧力を逃がした。返す刀で右のど輪。グイグイと押し込むと、新大関は左足を上げて体をのけぞらせた。休まず攻めて、甘くなった相手の両脇にもろ差し。寄り立て、最後は体を投げ出して押し出した。中卒たたき上げがエリート街道まっしぐら、注目の新大関を撃破。大歓声で迎えられた。 「過去の対戦が生きた。右を差されて一気に持っていかれるのは嫌だった。あの右だけは封じようと思ってとっさに左にずれた」。取組前までの対戦成績は1勝2敗で導き出した答えは「立ち合いで勝つ」。それを実践できた勢い、直感、戦略と、全てで上回った。 大相撲で各段優勝が1度もない隆の勝が、最後に優勝したのは中学3年時の09年、全国中学校選手権の千葉県予選だ。15年前だけに「だいぶ遠のいている。あまり人生で優勝を経験していない」と笑った。ただ今年だけでも大の里、尊富士と、入門間もない大卒力士がウサギのような速さで幕内優勝する姿に「負けたくない思い、悔しい思いはあった」と打ち明けた。優勝決定戦まで進んだ7月の名古屋場所で「気持ちは一段と強くなった」と今も成長を実感。相撲人生を象徴するように、カメの歩みで初優勝に挑む。【高田文太】