<ラグビー>サンウルブスの歴史的1勝の理由
天の配剤もあった。カーペンターを産み出したスクラムは、サンウルブズのパスをインターセプトした選手が落球して生まれたものだ。アスリートが嫌う「たられば」の論理に沿えば、悲劇が生まれてもおかしくなかった。 そもそも当日のジャガーズは、17日に来日するまでニュージーランドで4試合をこなしている。選手のコンディション調整のため、先発メンバーに本来の控えクラスを多く並べていた。 第一、サンウルブズがジャガーズに勝ったからといって、開幕前のトラブルが帳消しになるわけではない。選手たちは「自分にベクトルを向けるだけ」と言い切るが、苦労していたスクラムも、専門コーチの存在次第でスムーズな解決が見込めたかもしれない。昨秋の日本代表には、元フランス代表フッカーのマルク・ダルマゾがいた。かたやサンウルブズの逆境に終わりはなく、来季以降の青写真はまだオープンにされていない。 しかし、スポーツ史でフォーカスされるのは結果である。2016年4月23日、サンウルブズの1勝目。その事実は変わらない。選手の献身や気迫も確かだった。 試合後のロッカールーム。破顔したハメットヘッドコーチは350ミリリットルのビールを一気に飲み干した。盛り上がった流れで同じことをした佐藤秀則通訳は、「いま、いい気分です」と笑った。 サンウルブズは次節、休息する。次戦は5月7日の第11節で、相手はオーストラリアのウェスタン・フォースだ。場所はまたもホームの秩父宮だ。大野は「2週間、喜びに浸れるのは大きい」と言った。体調十分で臨みたい。 (文責・向風見也/ラグビーライター)