<ラグビー>サンウルブスの歴史的1勝の理由
専門コーチの不在が響いて開幕から手を焼いていたスクラムでは、改めてチームのセオリーをチェックした。隣同士、前後同士がしっかりと身体を密着させる。時にイリーガルな圧力をかけられても、慌てずにそのまとまりを保つ…。簡潔な約束事を大切にした。相手とぶつかる「ヒット」のスピードを速くするなど、技術的なマイナーチェンジも施した。 キックオフ早々に起ったスクラムでは、ほぼほぼ動かず。左プロップとしてフル出場の三上正貴は、「チーターズほどのプレッシャーがあったわけではない。イケる」と感じた。 13―15とリードされて迎えたハーフタイム直前。自陣22メートル線付近左の相手ボールスクラムを迎える。対する右プロップのナウエル・テタス・チャバロが、対面の三上ではなく中央で組むフッカーの堀江へ圧力をかける。ルール上は「アングル」という反則を取られる、「内組み」というやつだ。 実際にペナルティーと判定されたのは、三上の方だった。支えを失って潰れたことが、塊を故意に崩す「コラプシング」と目された。スタンドオフのファン・マルティン・エルナンデスのペナルティーゴールで、スコアは13―18となる。 三上は、動じなかった。 「あの時は、相手の3番(チャバロ)が膝をついていたのを持ち上げたんですよ。そうしたら、僕(の姿勢)が(高めに)浮いちゃって、そのまま内側に入られた」 修正点をすぐに見つけ、堀江とは「次から向こうが崩れてきたら、そのまま崩しちゃいますね」と打ち合わせた。後半になれば、改めて試合序盤のようなまとまりを示すことができた。攻防の起点を伍して、相手にペースを握らせなかった。 9点差で食らいつく後半16分、敵陣22メートル線左でスクラムを得る。低い姿勢で相手にぶつかり、地面のボールをすぐに後ろへ出す。ここからピシ、立川と左に展開する。その左脇へ駆け込んだのは、カーペンターだ。突破。右手を突きあげ、トライラインへ飛び込む。直後のゴールも決まり、23―25と差を詰めた。 ジャガーズは、全体的にグラウンドの内側から外側へ移動する「ドリフト」という守備方法を用いていた。立川はその傾向を踏まえ、自分たちに向かって「ドリフト」する選手とパスをする方角の間に自分の背中を入れる。外側の選手が「ドリフト」したその背後へ、カーペンターを走らせた。無形の力を発揮した立川だったが、スクラムへの賛辞を忘れなかった。 「スクラムが安定していたので、やりやすい。しっかり組んで、きれいにボールを出してくれた」 フッカーのアグスティン・クレービー主将は、こううなだれた。 「今日の試合、スクラムは2種類ありました。1種類は我々が機能してペナルティーに奪えたもの。もう1種類は、サンウルブズが素早くキープ。それを止めることができなかった…」